自己破産はしたもん勝ち?ずるい?逃げ得にならない理由やデメリット
投稿日: 2025.04.17 | 更新日: 2025.04.17

「自己破産はしたもん勝ちって本当?」
「自己破産はずるい?」
自己破産すると借金の支払いがすべて免除されるため、「したもん勝ち」といわれることもあります。
しかし、メリットが大きいからこそ条件は厳しく、デメリットも多いのが実情です。
この記事では、自己破産がしたもん勝ちといわれる理由や、自己破産のデメリットを解説します。
借金を放置するリスクと自己破産の必要性についても紹介するため、自己破産するべきか悩んでいる人は参考にしてください。
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自己破産が「したもん勝ち」といわれる3つの理由

自己破産が「したもん勝ち」といわれる理由は、次の3つです。
- 借金がなくなるから
- 国が法律で認めた制度だから
- 精神的ストレスから解放されるから
1つずつ解説します。
1.借金がなくなるから
自己破産すると裁判所から「免責許可」を受け、原則としてすべての借金の返済義務が免除されます。
任意整理や個人再生では、利息や借金を減らせても返済義務は残るため、自己破産ならではの大きなメリットといえるでしょう。
自己破産後の収入をそのまま生活資金にあてることで、早期に生活の立て直しを図れます。
2.国が法律で認めた制度だから
自己破産は、破産法という法律で正式に認められた借金解決方法です。
国のお墨付きを得ている制度であるため、「合法的に借金をゼロにできる」という安心感から、したもん勝ちと感じる人もいます。
もし、借金を返済しないまま延滞を続けると、取り立てや財産の差し押さえに発展しかねません。
その点、自己破産で合法的に借金を整理すれば、最低限の財産を残しながら破産後の生活を保障してもらえるメリットがあるのです。
3.精神的ストレスから解放されるから
精神的なストレスから解放されることも、自己破産のポイントです。
毎月収入の大半が返済に消えたり、督促や取り立てに追われる日々は、精神的に大きな負担となります。
自己破産して完全に借金がなくなれば、このようなストレスは一切なくなるため、したもん勝ちと感じる人もいるのです。
「したもん勝ち」にはならない!自己破産の9つのデメリット

自己破産の、したもん勝ちとはいえないデメリットは次のとおりです。
- 財産を失う
- 信用情報に傷がつく
- 家族や保証人に迷惑がかかる
- 誰でもできるわけではない
- 損害賠償金や税金の支払い義務は残る
- 高額な費用がかかる
- 官報に氏名・住所が載る
- 手続き中に制限を受ける資格・職業がある
- ギャンブルや浪費の借金は認められない
順番に詳しく解説します。
1.財産を失う
自己破産すると次のような財産は没収され、借金の精算にあてられます。
- 不動産
- 車
- 貴金属
- 退職金
- 生命保険の解約返戻金
マイホームや高価な車を所有していた場合は失うことになるため、大きなデメリットといえるでしょう。
ただし、生活に必要な最低限の家具・家電や99万円以下の現金、20万円以下の預貯金などは手元に残せます。
自己破産後は返済義務もないため、収入をそのまま生活資金にでき、自己破産前よりも生活自体はラクになる可能性が高いでしょう。
2.信用情報に傷がつく
自己破産すると信用情報に事故情報が記載され、いわゆる「ブラックリスト」になります。
ブラックリストの状態は5〜7年続き、クレジットカードの作成やローンの借入ができません。
ただし一生続くわけではなく、ブラックリストの間はデビットカードやQRコード決済などを活用することで対処できるでしょう。
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3.家族や保証人に迷惑がかかる
自己破産は、家族や保証人にも迷惑をかける行為です。
自己破産すると、自分のかわりに保証人が借金の一括請求を受けてしまいます。
支払いが難しく、保証人も自己破産するしかなくなることも珍しくありません。
また、家や車を失ったり、家族カードが使えなくなったりと、家族への影響もあります。
自分さえラクになればいいなどと考えず、自己破産する前に必ず家族や保証人に相談するようにしてください。
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家族の借金が返せないとどうなる?差し押さえ・相続・支払い義務を解説
4.誰でもできるわけではない
自己破産するには次のような条件があり、誰でも気軽にできる手続きではありません。
自己破産の条件
- 支払い不能状態である
- 免責不許可事由にあてはまらない
- 過去7年以内に個人再生や自己破産をしていない
- 裁判所費用を納めている
自己破産するには、安定収入がなく「支払い不能状態」と認められる必要があります。
また、次のような免責不許可事由にあてはまっていないことも条件です。
免責不許可事由にあたる行為の例
- 裁判所の調査に協力しない
- 没収されたくない財産を隠す
- 借金の原因がギャンブルや浪費
- 無職なのに収入があるとウソをついてお金を借りる など
さらに、過去7年以内に個人再生・自己破産していないことや、裁判所費用の支払いも求められます。
自己破産する際には、条件を満たしているかをよく確認するようにしてください。
5.損害賠償金や税金の支払い義務は残る
自己破産しても、損害賠償金や税金の支払い義務は残ります。
自己破産しても支払いが免除されない、主な非免責債権(ひめんせきさいけん)は次のとおりです。
非免責債権の例
- 税金・社会保険料・公共料金
- 損害賠償請求権
- 養育費
- 雇用関係に基づいた使用人への給料と預り金
- 罰金
税金や損害賠償金、子どもを養うための養育費、未払いの賃金などが非免責債権にあたります。
これらのお金は、たとえ自己破産しても払うべきものとして定められており、支払いが免除されることはありません。
税金の滞納額が多かったり、多額の養育費や損害賠償金を負っていたりした場合は注意が必要です。
逆にいうと、これらの滞納や支払いがもともとなければ、自己破産しても影響は少なく済むでしょう。
6.高額な費用がかかる
自己破産には、手続きに高額な費用がかかります。
弁護士費用として40〜50万円、裁判所費用として20〜50万円が目安です。
家や車などの財産があり調査が必要になると、財産の管理や処分を担当する破産管財人(はさんかんざいにん)が選任されるため、報酬として費用がかさむ場合があります。
財務状況や財産の有無で費用は変動するため、あらかじめ費用の目安を弁護士に確認しておくことが重要です。
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7.官報に氏名・住所が載る
自己破産すると、国の広報誌である官報(かんぽう)に氏名や住所が掲載されます。
これは自己破産したことを知らない債権者への情報周知や、反対意見の募集などが目的とされています。
ただし、官報の存在は知らない人も多く、金融機関関係者など一部の人しかチェックしていません。
そのため、官報から自己破産したことが周りにバレる可能性は低いでしょう。
8.手続き中に制限を受ける資格・職業がある
自己破産には、手続き中に制限を受ける資格・職業が存在します。
制限を受ける資格・職業の例
- 弁護士
- 司法書士
- 行政書士
- 税理士
- 生命保険募集人
- 貸金業者
- 宅地建物取引主任者
- 質屋
- 警備員 など
申立から免責許可決定が出るまで、約2〜6ヶ月は上記の仕事に就けません。
ただし資格を剥奪されるわけではないため、手続きが終われば元どおり働けます。
それまでは休職する、資格不要な別の部署で働くなどの方法で対処するといいでしょう。
9.ギャンブルや浪費の借金は認められない
原則として、ギャンブルや浪費が原因で負った借金は「免責不許可事由」に該当するため、自己破産が認められない可能性があります。
実際に、ギャンブルが原因で自己破産を認められた人の割合は、2020年で約7%と低めです。

ただし、免責不許可事由に当てはまるのは収入の半分以上をギャンブルにつぎこんだなど、常識の範囲を超えた浪費で借金を負ってしまった場合です。
破産管財人の調査により、ギャンブルが借金の主な原因といえなかったり、十分反省していて更生の余地があると判断されたりすれば、自己破産が認められるケースもあります。
心配な場合は、弁護士に相談してみるといいでしょう。
自己破産に罪悪感を覚える人のための債務整理の選択肢

自己破産に罪悪感を覚える人は、次の債務整理方法も検討してみてください。
- 任意整理を検討する
- 個人再生を検討する
任意整理を検討する
任意整理は債権者と交渉し、将来利息の減額や返済期間の延長を求める手続きです。
減額幅は個人再生ほど大きくないものの、元金を確実に返していけるため、3〜5年で借金完済を目指せます。
また、裁判所を通さないため手続きが比較的簡単で、整理する債権先を選べることがメリットです。
保証人への影響を避けたい場合や、車・家を残して借金を減らしたい場合は、任意整理がおすすめです。
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任意整理とは?後悔しないために知っておきたいメリットや注意点などわかりやすく解説!
個人再生を検討する
個人再生は裁判所を通し、借金を5分の1〜最大10分の1に減額する手続きです。
借金の減額幅が大きく、特約を付けると住宅ローンを支払っている家を残せるのが特徴です。
ただし手続きは複雑で、かかる費用や時間は大きくなります。
また、最低でも100万円以上の支払いが必要になり、安定収入は必須です。
財産を残したい場合や借金額が大きい場合は、個人再生を検討してみてもいいでしょう。
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自己破産を検討すべき人の目安は?

自己破産を検討すべき人の目安は次のとおりです。
- 借金に対して収入が少ない
- 利息の支払いに追われて元金が減らない
- 借入総額が年収の3分の1を超えている
自己破産は安定収入がなく、収入よりも借金のほうが多い人に向いています。
また、利息が膨らんで返済が利息の支払いばかりになり、元金が減らない場合にも適しているでしょう。
そのほか、総量規制というルールで年収の3分の1以上の借入はできないため、借入総額が年収の3分の1を超えていることが支払い不能、つまり自己破産するべきと判断される目安になります。
上記のいずれかに当てはまるようであれば、自己破産を視野に入れて弁護士に相談するのがおすすめです。
借金を放置するリスクと自己破産の必要性

自己破産にはマイナスのイメージが強いですが、かといって自己破産せずに借金を放置すると、次のようなリスクがあるため注意が必要です。
- 遅延損害金が発生する
- 残りの借金を一括で請求される
- 裁判所から支払い命令が届く
- 給与や財産を差し押さえられる
- 生活保護を受けても差し押さえられる可能性がある
- 借金は相続され家族に負担が残る
1つずつ解説します。
遅延損害金が発生する
1つ目のリスクは、支払い期日の翌日から遅延損害金(ちえんそんがいきん)が発生することです。
遅延損害金は、返済が遅れたことに対して発生する罰金のようなものです。
滞納している期間が長引くほど、遅延損害金の金額も増え、ますます返済が難しくなってしまうでしょう。
残りの借金を一括で請求される
2つ目のリスクは、滞納が続くと残りの借金を一括で請求されることです。
多くの場合、1回目までは督促が来る程度で済みますが、2回以上遅れると分割払いの権利を失ってしまいます。
すると債権者から一括請求が来て、支払い不能に陥る可能性が高いでしょう。
裁判所から支払い命令が届く
一括請求されても支払えずに放置した場合、裁判所から訴状や支払い命令が届きます。
これは、債権者が裁判所を通して借金を回収しようとするものです。
訴状が届いた場合は出廷が、支払い命令が届いた場合は2週間以内に異議申立書の提出が必要です。
給与や財産を差し押さえられる
自己破産せず、借金も支払えずに放置すると、最終的には給与や財産の差し押さえを受けます。
毎月発生する給与はもちろん、土地などの不動産や、貴金属・現金などの財産も対象になります。
給与の手取り額が減ると生活に大きく影響するだけでなく、家族にバレる可能性も高いでしょう。
さらに差し押さえの権利は5〜10年有効なため、現在収入がなくても、この先収入があれば差し押さえられるリスクもあります。
生活保護を受けても差し押さえられる可能性がある
生活保護を受けていても、財産を差し押さえられる可能性があります。
生活保護費は差し押さえの対象外ですが、生活保護費を受け取っている口座のお金は対象です。
つまり、対象の口座にお金が入っていれば、たとえ生活保護費であっても没収されてしまうのです。
借金は相続され家族に負担が残る
借金を返済できないまま亡くなったとしても、借金は家族に相続され、大きな負担を残してしまいます。
家族に相続されるのは財産や土地だけではなく、借金も同様です。
すると家族が返済義務を負うため、取り立てや督促に悩まされる可能性もないとはいえません。
家族を守るためにも、早めに自己破産するのがおすすめです。
自己破産はしたもん勝ちではない!迷ったら弁護士にご相談を

自己破産をしたもん勝ちととらえる人もいますが、国に認められた制度であり、決してズルいわけではありません。
一定の財産を失う、保証人に迷惑をかけるといったデメリットも多いため、本当に自己破産するかは慎重に判断するべきです。
自己破産に抵抗を覚える人は、任意整理や個人再生も視野に入れて検討するといいでしょう。
何よりも、借金を放置するリスクは高く、家族に迷惑をかける可能性もあります。
どの債務整理を選択すべきかはケースバイケースで、専門的な知識と経験がないと判断できません。
借金に苦しんでいる人は一人で悩まず、まずは弁護士に相談してみてください。
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