個人再生の積立金とは?返金や引き出し・期間はどうなる?
投稿日: 2025.08.08 | 更新日: 2025.08.12

個人再生の手続きでは、積立金を支払う必要があるとされていますが、その金額や期間についてはわかりづらいと感じる方も多いでしょう。
また、そもそも資金的に余裕がないからこそ個人再生を検討しているわけで、積立金を途中で引き出せるのか、手続き終了後に返金されるのかといった点も気になるところです。
この記事では、個人再生手続きにおける積立金の金額や期間、返金の可否などについて解説します。
また、積立金を支払えなかった場合、どのようなことになるのかも紹介しています。
そもそも個人再生とは?基本的知識のおさらい
まずは、個人再生の基本的な仕組みについて確認しておきましょう。
個人再生とは、裁判所に再生計画(返済計画)を認可してもらい、それに基づいて借金を大幅に減額し、原則として3年間で返済していく手続きです。
個人再生には「小規模個人再生」と「給与所得者等再生」の2つの種類がありますが、実際には会社員を含む多くの方が小規模個人再生を選択しています。
個人再生の詳細については、以下の記事でより詳しく解説していますので、ぜひご参照ください。
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個人再生の「履行テスト」とは?
個人再生では、「積立金」と呼ばれるお金を支払う必要があるという話を耳にしたことがあるかもしれません。
返済計画に無理がないかを確かめる積み立てのこと
この積立金は、いわゆる「履行テスト」にあたるものです。
「履行」とは、契約や義務を果たすことを意味し、ここでは借金の返済をきちんと行えるかどうかを確認するためのテストを指します。
つまり、個人再生における履行テストとは、裁判所に提出した再生計画に従って、実際に返済と同じ金額を支払い続けられるかを事前に確認するための制度です。
この履行テストの結果は、個人再生が認可されるかどうかに大きく影響します。
もしもテスト期間中に再生計画どおりの金額を積み立てることができなければ、「その計画では返済が難しい」と判断されてしまい、再生計画の見直しや、手続き自体の却下につながる可能性があります。
積み立てたお金は返ってくる?
履行テストで積み立てたお金(東京都の場合、「分割予納金」と呼ばれます)は、テスト終了後に返金されます。
ただし、全額が返ってくるわけではありません。
履行テストが行われるケースでは、「再生委員」と呼ばれる人物が裁判所から選任されます。
この再生委員の報酬が、積み立てたお金から差し引かれる仕組みとなっているのです。
再生委員とは、裁判所のサポート役として選ばれる弁護士で、債務者や債権者とは無関係の中立的な立場の人物です。
裁判官がすべての個人再生手続きを直接管理することは難しいため、書類のチェックや再生計画の確認などを再生委員が担当します。
なお、再生委員は裁判所の職員ではなく、地域で活動する民間の弁護士です。
そのため、報酬は税金ではなく、債務者が履行テストで積み立てたお金の一部から支払われることになります。
たとえば東京地方裁判所の場合、再生委員の報酬額は通常25万円程度とされており、個人再生を弁護士に依頼している場合は、15万円に減額されるケースもあります。
この金額は決して少なくはありませんが、再生委員の専門的な関与を受けられることを考えると、必要な費用と言えるでしょう。
一方で、大阪など再生委員が選任されない地域では、このような報酬の差し引きはありません。
そのため、履行テストで積み立てたお金は全額自由に使うことができ、返済原資として充てることも可能です。
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積み立てたお金を途中で引き出すことはできない
個人再生における積立金の運用方法は、地域によって異なります。
たとえば、東京都の場合には「分割予納金」として、再生委員が設置した専用口座に積み立て金を振り込む形式が取られています。
一方、大阪では、自分自身の口座に積み立てを行い、その状況を裁判所へ報告する形となっています。
このような違いから、「大阪では積立金を途中で引き出すことができるのではないか?」と思われるかもしれません。
確かに、形式上は大阪では積立金の引き出しが可能です。
しかし、履行テストの目的は、再生計画どおりの返済が可能かを証明することにあります。
したがって、積み立てたお金を途中で引き出してしまうと、履行テストに失敗したと判断される可能性が高くなります。
履行テストの失敗は、すなわち個人再生手続きそのものの失敗を意味するため、積立金の引き出しは厳禁です。
地域によって運用の仕組みに違いはあるものの、どの地域であっても積立金は再生計画を確実に履行できることを示す大切な資金であるという点に変わりはありません。
地域によって履行テストの有無が異なる
履行テストは、すべての個人再生申立人に対して実施されるものではありません。
実際には、東京や大阪などの大都市圏を中心とした一部の地域に限定されており、これらの地域は申立件数が多く、手続きの透明性や実行可能性を確認する必要性が高いためです。
一方で、地方部の多くの地域では、履行テスト自体が実施されていないのが現状です。
履行テストは、提出された再生計画に無理がないかを事前に確認する効率的な手段として活用されているものですが、運用の有無は地域ごとの方針によって異なります。
そのため、自分が住んでいる地域で履行テストが実施されるかどうかを確認したい場合には、弁護士に相談するのが確実です。
地域の運用状況に詳しい専門家であれば、最新の情報に基づいたアドバイスを受けることができます。
履行テストで積み立てる金額・期間はどれくらい?
実際に履行テストで積み立てる金額や期間がどれくらいなのかもご紹介いたします。
履行テストの金額期間をまとめると、次の表のようになります。
支払い頻度 | 月に1回 |
支払い額 | 1回分の弁済額と同じ金額 |
支払い期間 | 最長6ヶ月(東京都の場合) 再生計画が認可されるまで(その他の地域) |
支払い先 | 個人再生委員が指定した銀行預金口座(東京都の場合) 自分で設置した積立金用の銀行預金口座(その他の地域) |
積み立てる金額は返済計画による
履行テストで支払う金額は、再生計画に基づく毎月の返済額と同額に設定されます。
これは、実際に返済計画どおりの支払いが可能かどうかを確認するという履行テストの趣旨からして当然のことです。
たとえば、再生計画で月々3万円の返済が予定されている場合には、履行テストにおいても毎月3万円を積み立てる必要があります。
履行テストの期間は最長6か月
履行テストの期間は、裁判所の運用によって異なりますが、東京地方裁判所では最大で6か月間にわたり実施されます。
ただし、途中の積立状況や申立人の返済能力に問題がないと判断された場合には、6か月を待たずに早期終了となることもあります。
また、履行テストの第1回目の支払いは、個人再生の申立からおおむね1週間後には行う必要があります。
したがって、申立時にはあらかじめ履行テスト1〜2回分の積立金を用意しておくことが望ましいとされています。
このように、個人再生を申し立てる際には、あらかじめ再生計画を作成し、履行テストに対応できる準備を整えておくことが重要です。
積立金を支払えなかったらどうなる?
履行テストは、個人再生手続きを成功させるために非常に重要なステップです。
このテストを通じて、提出された再生計画に基づいた返済が現実的かどうかが判断されます。
再生計画の見直しがなされる
もし履行テストの積立金の支払いに失敗した場合、
それはすなわち、再生計画そのものが無理のある内容であると判断されることを意味します。
その場合、裁判所や再生委員からの指導により、返済期間の延長や返済額の見直しなど、再生計画の修正が求められることになります。
個人再生が失敗に終わることも
見直し後の計画でも返済の見込みが立たないと判断された場合には、
残念ながら個人再生手続きは不認可となり、失敗に終わる可能性があります。
このような場合、債務者が借金の返済義務から法的に解放される手段として、自己破産の手続きを検討することになるでしょう。
履行テストの失敗は個人再生にとって大きな影響を与えるため、無理のない計画を立て、確実に積立を継続することが非常に重要です。
事前に弁護士とよく相談し、準備を整えてから申立てを行うことが成功への近道です。
個人再生に失敗した場合、個人再生手続費用は返ってこない
個人再生手続きに失敗した場合、手続きにかかった費用は原則として返金されません。
ただし、積立金については少し事情が異なります。
再生委員が選任されているケースでは、履行テストの積立金から再生委員の報酬が差し引かれた上で、残額が返金される仕組みとなっています。
しかし、積立金が再生委員の報酬額(例:15万円または25万円)に満たない場合には、返金される金額はゼロとなる可能性があります。
個人再生手続きは、時間も費用もかかる制度です。
そのため、これらの負担を無駄にしないためにも、履行テストに真剣に取り組み、計画どおりに積立を行うことが成功への重要な鍵となります。
個人再生に必要な期間 | 約半年 |
個人再生に必要な費用 | 約50万円~ |
履行テストを成功させるコツ2つ
履行テストに失敗すると、再生計画の見直しに時間がかかるだけでなく、最悪の場合、個人再生手続きそのものが失敗に終わる可能性があります。
そうならないためにも、履行テストを確実に成功させることが非常に重要です。
ここでは、履行テストを乗り越えるための2つのポイントを紹介します。
1:滞納をしない
最も重要なのは、積立金の支払いを一度たりとも滞納しないことです。
個人再生は、借金の返済が困難になった人が、裁判所の認可を受けて借金の一部を大幅に減額し、
その残りを分割で返済していくという債務者救済の制度です。
この制度は、債権者に大きな不利益を認めたうえで、債務者の再出発を支援するものであり、
その分、制度の信頼性が非常に重視されます。
つまり、履行テストで滞納をすれば、「この人は返済する能力や意思がない」とみなされ、個人再生の認可が下りなくなるおそれがあります。
たとえ資金があっても、「うっかり忘れた」「期日を勘違いした」などの理由で支払いを遅延してしまえば、
返済の意思がないと誤解されてしまう可能性もあります。
履行テストは、返済能力だけでなく、返済意思を確認する場でもあるため、
どんな事情があっても支払いの遅れは絶対に避けることが重要です。
2:支払いが難しいときはすぐに相談する
履行テストの期間中に、病気や事故、収入減少などの事情で一時的に支払いが困難になることも十分にあり得ます。
そのような場合には、決して黙って滞納せず、できるだけ早く弁護士を通じて裁判所に事情を伝えるようにしましょう。
裁判所も機械的に手続きを進めるわけではなく、やむを得ない事情があると認められれば、柔軟に対応してくれることがあります。
大切なのは、「返済が苦しいからといって放置しないこと」「無断で延滞しないこと」です。
問題を先延ばしにするのではなく、早めに相談して対応策を講じることが、個人再生の成功につながります。
まとめ
今回は、個人再生手続きにおける履行テストについて紹介してきました。
履行テストは、個人再生手続きを成功させる最重要ポイントと言っても過言ではありません。
履行テストを成功させる秘訣は、まずは実態に即した再生計画を作成することと、そしてこれを確実に・誠実に履行していくことです。
どうしても返済が厳しいようであれば、直ちに自己破産も検討すべきですので、その時はすぐに弁護士に相談してましょう!
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