自己破産したらどうなる?費用や流れなど基礎知識をわかりやすく解説
投稿日: 2025.02.04 | 更新日: 2025.02.10

自己破産は「債務整理」の種類のひとつです。
借金が返済できない状態にある人にとって、再スタートを切るための選択肢となります。
しかし、自己破産にはメリットとデメリットがあり、実際に手続きに進む前には慎重な判断が求められるものです。
この記事では、自己破産の仕組みや手続きの流れ、注意点を詳しく解説し、自己破産を検討している方が抱える不安や疑問を解消します。
以下の記事で債務整理の基本知識について詳しく解説していますので、あわせてご確認ください。
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債務整理とは?弁護士がメリットデメリットや費用をわかりやすく解説
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自己破産とは?

自己破産は、多額の借金を抱えて返済が難しい人を救済する制度です。
主な特徴は次のとおりです。
- 自己破産は借金の返済義務がなくなる手続き
- 自己破産の目的は生活の再建
以下で詳しく解説します。
自己破産は借金の返済義務がなくなる手続き
自己破産とは、債務整理の一種で、法律に基づき借金の返済義務を免除する手続きです。
この手続きにより、経済的な再出発が可能になります。
「経済的な再出発」とは、借金の返済負担から解放され、生活基盤を再構築することです。
具体的には日々の生活に必要な支出を見直し、無理のない支出計画を立てられるようになることです。
たとえば「借金の返済が難しい状況にある人」「他の債務整理では解決が難しい人」「返済が家計や生活に深刻な影響を及ぼしている人」などが選択できる手続きです。
自己破産の目的は生活の再建
自己破産の目的は、返済不能に陥った人の生活を再建することです。
破産法という法律に基づき、債務者が新たな生活を始められるよう支援する仕組みとして運用されています。
(目的)
引用:破産法 – e-Gov
第一条 この法律は、支払不能又は債務超過にある債務者の財産等の清算に関する手続を定めること等により、債権者その他の利害関係人の利害及び債務者と債権者との間の権利関係を適切に調整し、もって債務者の財産等の適正かつ公平な清算を図るとともに、債務者について経済生活の再生の機会の確保を図ることを目的とする。
自己破産では、借金問題で困難な状況にある人が最低限の財産を守りながら再出発できる道が用意されています。
たとえば、病気やケガ、突然のリストラなど、収入が途絶える事態は誰にでも起こり得るでしょう。
自己破産を利用すれば、過度な借金の負担から解放され、生活を立て直せるようになります。
自己破産すべき基準

自己破産に明確な基準はなく、条件を満たしていれば利用できる制度です。
とくに以下のような状況に該当する場合は、自己破産を検討する価値があるでしょう。
- 借金が非常に高額で、返済の目途が立たない
- ケガや病気などで働けず、収入を得られない状態
一方で、借金の金額や返済能力によっては、他の債務整理が適している場合もあります。
次のようなケースでは、別の手続きを検討するのがよいかもしれません。
- 借金がそこまで大きくない
- 働いていて、月々の返済額を減らせれば支払える見込みがある
このような状況では、自己破産よりも任意整理や個人再生など他の債務整理を検討する方が、経済的な負担を減らしながら柔軟に問題を解決できる可能性があります。
自己破産できる条件

自己破産は借金の返済義務を免除できる非常に強力な手続きですが、利用するには以下3つの条件を満たす必要があります。
条件 | 内容 |
①支払い不能状態であること | 今返済期日が来ている借金を、今だけでなく今後も継続的に返済できない状態 |
②借金が非免責債権(ひめんせきさいけん)だけではないこと | 税金や賠償金など自己破産で免除できない支払いだけではないこと |
③免責不許可事由(めんせきふきょかじゆう)に該当しないこと | 自己破産で禁止されている行為や借金に該当しないこと |
上記の条件がそろっていないと、裁判所に申し立てても自己破産が認められない可能性があります。
たとえば、税金や賠償金は自己破産でも免除されないため、それ以外の借金がなければ手続きは利用できません。
また、過去の行為が免責不許可事由に該当する場合も、自己破産が認められない可能性があります。
免責不許可事由とは自己破産の手続きにおいて、借金の免除(免責)が認められない原因となる事由のことです。
自己破産を申し立てた場合、借金が免除される「免責」を受けるためには、いくつかの条件を満たす必要があります。主な内容は次のとおりです。
- 財産を隠したり、処分していないこと
- ギャンブルや浪費によって借金を作った場合でないこと
- 自己破産手続きに非協力的な態度を取らないこと
- 偽りの申告を行わないこと
- 過去7年以内に自己破産や個人再生を行っていないこと
借金が返済できない状況にある人は、これらの条件を確認したうえで手続きを検討する必要があります。
裁判所への申し立てに必要な書類

自己破産を申し立てる際には、住まいを管轄する地方裁判所で手続きを行います。
その際、次のような書類を準備する必要があります。
- 自己破産申立書
- 陳述書
- 債権者一覧表
- 財産目録
- 収入がわかる資料(源泉徴収票、給与明細、預金通帳のコピーなど)
- 住民票
- 家計簿
裁判所では、申請者の財産(家や車、預金など)を詳しく調査し、借金の返済が本当に困難かどうかを確認します。
また、借金が少額すぎる場合は、自己破産の手続きが認められないケースもあるため注意が必要です。
自己破産手続きには弁護士へ依頼するのがおすすめ
自己破産の手続きでは多くの書類を提出し、借金が返済不能であることを証明する必要があります。
また、財産の状況や債権者(金融会社や貸金業者)との関係を整理する中で、専門的な知識が求められる場面も少なくありません。
そのため、自己破産の手続きを進める際は弁護士に依頼するのが一般的です。
弁護士は、書類作成から裁判所とのやりとりにおける手続き全般をサポートしてくれるため、自己破産における手続きもスムーズに進めてくれます。
弁護士費用が心配な方もいるかもしれませんが、分割払いに対応している場合も多く費用免除の制度が利用できる事務所もあります。
以下で費用について解説しているので参考にしてください。
自己破産にかかる費用

自己破産を進めるには「裁判所の費用」と「弁護士費用」が必要です。
手続きがシンプルな場合でも最低限の費用が発生し、財務状況が複雑な場合には追加費用がかかることもあります。
具体的には、自己破産手続きにおいて財産調査が必要な場合や、多数の債権者が関与している場合などです。
以下で詳しく解説します。
一般的には40~50万円
自己破産には、裁判所の費用と弁護士費用がかかります。
裁判所の費用は数万円程度で済むことが多いですが、弁護士費用の相場は40~50万円とされています。
ただし、弁護士費用を一括で支払う必要はなく分割払いに対応している場合も多いため、まとまったお金がない場合でも手続きを進められます。
自己破産を検討している人は、こうした費用を事前に把握しておくと安心です。
複雑な場合は裁判所費用が追加で20~50万円ほどかかる
自己破産手続きが複雑な場合には、裁判所費用が大幅に増える可能性があります。
たとえば、家や車などの財産がある場合には、その財産を管理したり債権者へ分配するために「破産管財人(はさんかんざいにん)」が選任されます。
破産管財人とは裁判所が指定する第三者で、申請者の財産の管理や債権者への配当を行う役割を担う人です。
この破産管財人への報酬として、追加で20~50万円ほどが必要になります。
財務状況や財産の有無によって費用が変動するため、自己破産を考える際には、どの程度の費用がかかるかを事前に確認することが重要です。
自己破産の費用が払えない場合

自己破産を進めるには費用が必要ですが、経済的に困窮しているために支払えない場合もあります。
そのような状況で有効な方法は次のとおりです。
- 分割払いに対応してる弁護士に依頼する
- 法テラスで自己破産をする
- 他の債務整理を選択する
それぞれの内容を詳しく解説します。
分割払いに対応してる弁護士に依頼する
自己破産にかかる弁護士費用を一度に用意できない場合は、分割払いを利用する方法があります。
分割払いに対応している弁護士に依頼すれば、費用を少額ずつ支払いつつ手続きを進められます。
さらに、弁護士が債権者(お金を貸している側)に送る「受任通知」の効果により、取り立てや返済の催促が止まるため、弁護士費用の準備に専念できる点も大きなメリットです。
分割払いの条件や対応可能な弁護士を探して、早めに相談することをオススメします。
法テラスで自己破産をする
法テラス(日本司法支援センター)の活用で、自己破産に必要な費用を軽減できる可能性があります。
法テラスは国が設立した法律支援機関です。
利用条件を満たせば、費用の立て替えや少額での分割払いを受けられるほか、場合によっては費用が免除されることもあります。
とくに収入が低い方や生活保護を受給している方にとっては、安心して利用できる制度です。
以下の記事では法テラスの利用条件について詳しく解説しているので、あわせて参考にしてください。
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債務整理の無料相談でできることは?おすすめの法律事務所も紹介
他の債務整理を選択する
自己破産が難しい場合には、任意整理や個人再生といった他の債務整理を検討する選択肢もあります。
任意整理では借金の利息カットを主な目的としており、弁護士費用は1社あたり2〜5万円程度で済みます。
借金が少額で収入があり、月々の返済額を減らせば支払いが可能になる場合には、任意整理が有効な手段となるでしょう。
自身の借金状況や返済能力を踏まえて、最適な解決方法を選ぶことが重要です。
債務整理の種類については以下の記事も参考にしてください。
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債務整理の種類を解説!4種類の特徴・メリット・デメリットとは?
自己破産するとどうなる?手続き後も出来ること・必要なこと

自己破産をしても、生活が大きく制限されるわけではありません。
実際には一定の制約がある一方で、多くの権利や生活の自由が守られています。
以下に具体的な例を紹介します。
- 賃貸契約はできる
- 携帯は使える可能性がある
- 戸籍や住民票に記録が残らない
- 年金や生活保護は受給できる
- 選挙にも参加できる
- 税金や養育費は払う必要がある
賃貸契約はできる
自己破産後でも賃貸契約を結べるケースは多くあります。
信販系(クレジットカード会社が運営)の家賃保証会社では審査が厳しくなる可能性がありますが、信用情報を参照しない独立系の保証会社を利用すれば審査に通ることもあります。
住む場所を確保したい場合は、保証会社の種類を事前に確認するとよいでしょう。
携帯は使える可能性がある
自己破産後も、携帯電話の利用は通常どおり可能です。
ただし、過去に通信料や端末代金の未払いがある場合は、キャリアとの契約が継続できない場合があります。
また、新たに端末を購入する際の分割払いは審査が通りにくいため、一括購入や別のキャリアへの乗り換えなどで対応できます。
戸籍や住民票に記録が残らない
自己破産の事実が戸籍や住民票に記録されることはありません。
自己破産の情報が記録されるのは、信用情報機関や官報(政府が発行する公報)だけです。
信用情報機関では、主に金融機関やクレジットカード会社が新規の借り入れ申請やカードの審査時に情報を参照します。
官報は、政府が発行する公報で、破産手続きや商業登記などの重要な法的手続きを広く公示するためのものです。
官報は一般的に公開されており、誰でも閲覧することができますが、日常的に官報をチェックする人は少なく、金融機関や弁護士など、特定の業界関係者が主に見るものです。
そのため、日常生活で自己破産の記録を見られる心配はほとんどありません。
戸籍や住民票への影響もないため、将来の結婚相手に知られる心配も必要ないでしょう。
年金や生活保護は受給できる
自己破産をしても、年金や生活保護を受給する権利は失われません。
経済的に困窮している場合でも、社会的な支援を受けられるためです。
年金は、既に支給されているものに関しては引き続き受け取ることができ、生活保護についても自己破産によって受給資格は喪失しません。
生活保護についても自己破産後も経済的に困窮している状況に変わりがなければ、支援を受け続けられます。
このように、自己破産をしても、生活基盤を再構築するための支援を受けることは可能です。
選挙にも参加できる
自己破産をしても選挙権を失うことはありません。
選挙権は日本国憲法で保障されており、自己破産によって制限を受けることはないため引き続き選挙に参加できます。
税金や養育費は払う必要がある
自己破産後も、税金や養育費の支払い義務は免除されません。
とくに税金は延滞税が重くなるため、自治体の窓口で分割納付の相談を早めにするとよいでしょう。
自己破産後も支払うべき義務について理解しておけば、計画的に対応できるはずです。
自己破産のメリット

自己破産と他の債務整理では、手続きの方法が大きく異なります。
自己破産という言葉には、ネガティブな印象を抱く人が少なくありません。
しかし、自己破産をする利点は以下のように多くあります。
- ほとんどの支払いが免除される
- 生活に必要な財産は残せる
- 取り立てや差し押さえを受けずに済む
- 差し押さえが停止する
- 奨学金も免除される
- 支払い困難な状況にある多くの方が利用できる
- 人生をやり直せる
- 精神的な負担の軽減
以下で詳しく解説します。
ほとんどの支払いが免除される
自己破産では、借金や未払い金の多くが免除されます。主な対象は次のとおりです。
- 消費者金融
- 銀行のローン
- クレジットカード支払い
- 奨学金
- 滞納家賃など
ただし、税金や養育費など免除されない支払いもあるため、事前に確認する必要があります。
借金の返済から解放されることで、生活再建に専念できる点は最大のメリットだといえるでしょう。
生活に必要な財産は残せる
自己破産をした場合でも、99万円以下の現金や20万円以下の財産(預貯金など)生活必需品や仕事に必要な道具は処分されません。
生活再建の基盤を守るための配慮がされており、無一文になることはないため安心して手続きできる点もメリットです。
取り立てや差し押さえを受けずに済む
自己破産の申請が受理されると、法律により債権者(金融会社や貸金業者)からの取り立て行為や給与口座の差し押さえが停止されます。
債権者からの催促や督促が止まり、精神的な負担が軽減されるとともに、生活の安定を取り戻すために必要な時間を確保できるでしょう。
また、差し押さえが停止されれば給与や預金が差し押さえられる心配がなくなり、生活に必要な資金を確保できるようになります。
差し押さえが停止する
自己破産の手続きが進むと、債権者による口座や給与の差し押さえが停止されます。
差し押さえや督促の停止によって、必要な生活費を確保しながら次のステップに進むことが可能です。
奨学金も免除される
奨学金も自己破産で免除の対象となりますが、保証人が家族の場合には請求が移行する可能性があるため注意が必要です。
一方で、機関保証の場合は保証人に請求される心配がありません。
支払い困難な状況にある多くの方が利用できる
自己破産は無収入や無職の人、生活保護受給者であっても申請できます。
支払い能力に関わらず手続きが進められるため、幅広い人が利用可能です。
ただし、免責不許可事由がある場合は例外となるため、弁護士への相談が推奨されます。
人生をやり直せる
自己破産は借金から解放され、人生を再スタートするための手段です。
経済的な負担を減らし、将来に向けた新しい生活設計を可能にします。
多重債務に苦しむ人にとって、大きな救いとなる制度です。
精神的な負担の軽減
自己破産により、取り立てや支払いプレッシャーから解放されるため、精神的な負担が軽減します。
今後は自分や家族の生活に集中できるようになるでしょう。
生活に安心感を取り戻すための一歩となりえる選択だといえます。
自己破産のデメリット

自己破産は借金問題を解決するための強力な手続きですが、その代わりに伴うデメリットも避けられません。
デメリットとなる要素は次のとおりです。
- 一定期間クレジットカードやローンを利用できない
- 家や車など高価な財産は処分される
- 引っ越しや旅行が制限される
- 5~7年は借金ができない
- 連帯保証人に請求が行く
- 税金など免除されないものもある
- 自己破産できないケースもある
- 一部の仕事は制限をされる
- 官報に氏名や住所がのる
一定期間クレジットカードやローンを利用できない
自己破産をすると、一定期間クレジットカードやローンの審査に通ることが難しくなります。
自己破産を含む債務整理では、整理した事実が信用情報機関に記録されます。いわゆる「ブラックリスト」と呼ばれる状態です。
信用情報機関に記録のある状態では信用がないと判断され、新たな借り入れやローンの契約が制限される可能性が高まります。
しかし記録は5~7年で削除されるため、それ以降は再び利用が可能になる場合がありますが、それまでは現金払いなどで対応する必要があります。
詳しくは以下の記事もあわせてお読みください。
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家や車など高価な財産は処分される
自己破産では、持ち家や車などの高価な財産は裁判所に没収されます。
この措置は、債権者(貸金業者や金融機関など)の損失を少しでも補うためのものです。
たとえば、次のような財産が換価処分(換金)されます。
- 現金99万円を超える金額
- 20万円以上の価値がある財産(車、家、貴金属、預貯金など)
ただし、生活に必要な家財や最低限の現金は残されます。また、家族名義の財産には影響しません。
引っ越しや旅行が制限される
自己破産の手続き中は、裁判所の許可が必要になるため、引っ越しや海外旅行が制限されます。
これは、財産調査や債権者との調整をスムーズに行うためです。
手続きが終了すれば、引っ越しや旅行の制限は解除され自由に行動できます。
5~7年は借金ができない
自己破産後、信用情報に事故情報が登録(ブラックリストといわれる状態)されることで5~7年間は新たな借金が困難になります。
この期間中はクレジットカードの発行やローン契約ができなくなるため、家計の管理が必要です。
ただし、5~7年たって信用情報から記録が消えた後は、借り入れが可能になるケースもあります。
連帯保証人に請求が行く
自己破産をすると連帯保証人がついた借金の返済義務は、保証人側に移ります。
連帯保証人は借金を肩代わりする義務があるため、返済が難しい場合には迷惑をかけることになるでしょう。
このような場合、任意整理など他の債務整理の方法を検討したり、連帯保証人も自己破産を検討する必要があります。
任意整理は裁判所を通さず直接債権者に利息カットを求める手続きで、保証人のついていない整理先を選択できる方法です。
税金など免除されないものもある
自己破産ではほとんどの債務が免除されますが、次の支払い義務は免除されません。
免除されない債務の種類は次のようなものがあります。
- 税金・罰金
- 賠償金
- 婚姻費用や養育費
- 従業員の給料
上記は非免責債権といい、自己破産後も支払い続ける必要があります。
自己破産できないケースもある
次のような状態では自己破産が認められないケースがあります。
- 財産を隠したり処分したりした場合
- ギャンブルや浪費などで作った借金
- 手続きに非協力的な態度をとった場合
このようなものを「免責不許可事由(めんせきふきょかじゆう)」と呼ばれ、該当すると自己破産ができなくなる恐れがあります。
一部の仕事は制限をされる
自己破産の手続き中、一部の職業に就けなくなる場合があります。
たとえば、次のような職業が対象です。
- 行政書士や公認会計士などの士業
- 警備員
- 公証人
職業の制限は一時的な制限であり、手続きが完了すれば再び就業できるようになります。
官報に氏名や住所がのる
自己破産をすると、氏名や住所が官報(政府発行の公報)に掲載されます。
官報は手続きの透明性を確保するためのものですが、一般の人が官報を閲覧する機会は少ないため、広く知られる可能性は低いといえます。
自己破産すると生じる家や家族への影響

自己破産をしても、基本的には家族への直接的な影響はありません。ただし、いくつか注意すべき点があります。
とくに連帯保証人として家族が関与している場合や、名義が共有されている財産に関しては、影響が生じる可能性があります。
以下で、家族への影響を詳しく解説するので参考にしてください。
家族の信用情報に傷はつかない
自己破産をした人だけが信用情報に影響を受けます。
家族の信用情報には影響がないため、家族がローンを組んだり、クレジットカードの審査を受けたりする際には問題は生じません。
ただし、自己破産を申し立てた人の名義で家族カードや携帯電話を契約している場合、対象となるものは使えなくなる場合があります
連帯保証人にである家族に請求が来る
借金の連帯保証人が家族である場合、自己破産をすると家族に請求が届くことになります。
家族の財産に影響が出ることがあるため、連帯保証人として関わっている借金がある場合は、事前に他の債務整理を検討したり、家族も一緒に自己破産を申請することが考えられます。
家族の結婚や就職には影響しない
自己破産は家族の結婚や就職に直接的な影響を与えることはありません。
自己破産した事実は信用情報と官報に記載されますが、それ以外の場所には記録として残らないため、赤の他人が確認することはありません。
ただし、官報を定期的にチェックしている金融機関で勤務している場合などには、影響が出る可能性があります。
自己破産後の人生はどうなる?体験者の声

ここで実際に自己破産を経験した人の声をご紹介します。
自己破産の流れ

自己破産の手続きは、いくつかのステップを踏む必要があります。
手続きの流れを理解することは、自己破産後の生活を見据えた重要なポイントです。
以下に、自己破産を申し立てた場合の主な流れを紹介します。
自己破産にかかる期間は半年から1年
自己破産にかかる期間は、一般的に半年から1年ほどとされています。
仮に財産調査が不要で「同時廃止(どうじはいし)」の手続きになる場合、3〜4ヶ月程度で手続きが完了します。
これは、財産が少ない場合やほとんど財産を持っていない場合に該当する手続きです。
しかし、財産調査が必要な「少額管財事件(しょうがくかんざいじけん)」や「管財事件」の場合、手続きが4〜6ヶ月、長ければ1年近くかかることもあります。
さらに、弁護士費用の積み立てや必要書類を集める期間も考慮すると、全体的に時間がかかる可能性があります。
自己破産と他の債務整理との違い

自己破産を考える際、他の債務整理との違いを理解する必要があります。
自己破産の条件を満たさない場合は、任意整理や個人再生といった他の債務整理方法を利用します。
それぞれの方法の異なる特徴と違いは次のとおりです。
- 手続きの方法
- 返済義務の有無
- 財産への影響
- 対象となる借り入れ
- ブラックリストの状態になる期間
- 官報への掲載
- 費用
以下で詳しく解説します。
手続きの方法
自己破産と他の債務整理では、手続きの方法が大きく異なります。
任意整理 | 債権者と交渉して減額する |
個人再生・自己破産 | 裁判所に申し立てて減額や免除をする |
任意整理は、裁判所を通さずに進める交渉方法であり、必要な書類も少なく、ルールも比較的緩やかです。しかし、強制力がないため、債権者が交渉に応じないケースもあります。
自己破産は裁判所を通じて借金が免除される一方、任意整理や個人再生は返済義務が残る点が大きな違いです。
返済義務の有無
返済義務の有無は、債務整理方法を選ぶうえで重要なポイントとなります。
それぞれの特徴と違いは次のとおりです。
任意整理 | 借金は減額されるが返済義務は残り、減額された借金を3~5年で返済する |
個人再生 | 借金が最大で10分の1まで減額され、残りの借金を返済する義務が残る |
自己破産 | 借金の返済義務が免除される |
返済能力がある場合、任意整理や個人再生が選ばれることが多いですが、無職や生活保護の場合、返済義務が残るこれらの方法は利用できない可能性が高くなります。
自己破産は返済義務が免除されるため、生活再建がしやすくなりますが、任意整理や個人再生では返済義務が残る点に注意が必要です。
財産への影響
債務整理方法によって、財産に対する影響が異なります。
それぞれの違いは次のとおりです。
任意整理 | 財産を没収されるなどの決まりはない |
個人再生 | 財産を没収されることはない住宅ローンが残る家も残せる |
自己破産 | 一定以上の高価な財産は没収される |
自己破産では財産の一部を没収される可能性がありますが、任意整理や個人再生では財産を保持しつつ、借金の整理ができる点が特徴です。
対象となる借り入れ
整理できる借り入れの範囲も手続き方法によって異なります。
任意整理 | 整理対象を自分で選べる |
個人再生・自己破産 | すべての支払いが減額や免除の対象となる |
任意整理では整理対象となる借金を選べるため、特定の借金だけを対象にできますが、自己破産や個人再生ではすべての借金が対象となります。
ブラックリストの状態になる期間
ブラックリストに載る期間も、債務整理方法ごとに異なります。
任意整理 | 完済から5年 |
個人再生 | 完済から5年 |
自己破産 | 5~7年 |
上記の期間は、信用情報機関(CIC、JICC、KSC)の記録に基づいて決まります。
信用情報機関個人や企業の信用に関する情報を管理している機関です。
日本には、CIC(シー・アイ・シー)、JICC(日本信用情報機構)、KSC(全国銀行個人信用情報センター)などの信用情報機関があります。
上記いずれかの期間に登録されている状態では、ローンやクレジットカードの審査に影響をあたえるため、クレジットカードの登録や新規借入が難しくなります。
官報への掲載
裁判所を通して手続きを行う自己破産と個人再生は、官報に掲載されます。
官報(かんぽう)とは、政府や裁判所が発行する公式な公報です。日本で行われた重要な法的手続きや公告が記載されます。
自己破産や個人再生の場合、裁判所が手続きを公示するため官報に掲載されるのが一般的です。
任意整理は裁判所を通さないため官報には載りません。
費用
債務整理には、それぞれ異なる費用がかかります。
それぞれの方法における費用相場は次のとおりです。
手続き | 費用の相場 | 減額効果 |
任意整理 | 弁護士費用:交渉1社2~5万円 | 利息程度 |
個人再生 | 弁護士費用:40~60万円 裁判所の費用:数万円~15万円ほど | 元本から最大10分の1まで減額 |
自己破産 | 弁護士費用:40~50万円 裁判所の費用:数万円~50万円 | 借金の返済義務がなくなる |
任意整理は最もリーズナブルですが、減額の効果は限られています。自己破産や個人再生は費用が高額ですが、減額幅や免除される点で大きなメリットがあります。
自己破産でよくある質問

自己破産に関するよくある質問とその回答を以下にまとめました。自己破産を検討している方に役立つ情報です。
自己破産でやってはいけないことはある?
自己破産を申し立てる際、免責不許可事由に該当する行為を行うと、自己破産が認められない可能性があります。
やってはいけないことは次のとおりです。
- 財産を隠す、財産を勝手に処分する
- 裁判所や破産管財人の手続きに協力しない
- 手続き中に新しく借金をする、ギャンブルなどをする
- 特定の債権者にだけ返済をする
- クレジットカードの現金化をする
これらの行為を行うと、自己破産が認められないリスクが高まります。
手続き中は誠実に協力し、適切な行動を取ることが重要です。
ギャンブルや投資の借金は自己破産できる?
ギャンブルや投資の借金は、「免責不許可事由」に該当するため、基本的には自己破産がは認められません。
しかし、裁判所が反省の態度を見せ、今後同じ過ちを繰り返さないと判断すれば、免責されるケースもあります。
金額が非常に大きい場合など難しいケースもあるため、弁護士に相談するとよいでしょう。
自己破産を選ぶ前に、専門家に相談して適切なアドバイスを受ければ、自分に合った適切なアドバイスをもらえます。
本人の仕事や結婚に影響はしない?
自己破産をしても、基本的に本人の仕事や結婚には直接的な影響はありません。
自己破産が原因で解雇されたり、結婚ができなくなったりすることはないと言われています。
ただし、職業によっては影響が出ることもあります。
たとえば、金融機関に勤務している場合は官報で自己破産を知る可能性があり、職場に知られる可能性があります。
自己破産自体が直接的な影響を与えるわけではありませんが、職業や状況によっては事前に確認しておくことが重要です。
自己破産は自分でできる?
自己破産の手続きは、知識と準備があれば自分でできますが、かなりの手間と時間がかかります。
裁判所に提出する書類の準備や手続きの詳細な理解も必要です。
また、裁判所は平日しか開かないため勤務時間に合わせて休みを取る必要があります。
弁護士に依頼しない場合、手続きが進んでいる間も債権者からの取り立てが続くため、精神的・金銭的に負担が大きくなる可能性もあるでしょう。
とくに免責不許可事由(「自己破産できる条件」を参照)がある場合、自己破産が認められない可能性も高いため弁護士に依頼するのが安全です。
弁護士に依頼すれば手続きが円滑に進むだけでなく、法律的なアドバイスも得られるため、自己破産の成功率が高まります。
自己破産は弁護士と司法書士どちらに依頼すべき?
自己破産をする場合、弁護士への依頼がオススメです。その理由として、両者には以下のような違いがあります。
- 司法書士は代理人になれない
- 面談や集会に自分で参加する必要がある(破産管財人との面談や債権者集会など)
- 司法書士に依頼する場合、サポートは主に書類作成に限られる
このように司法書士は代理人として裁判所とのやり取りができないため、面倒な手続きに直接参加する必要があります。
弁護士は財産調査を含めた手続き全般をサポートしてくれるためオススメです。
自己破産は会社にバレる?
自己破産をしても、基本的には会社にバレることはなく、解雇の理由にもなりません。
ただし、会社から借り入れがある場合は自己破産手続きで債権者に通知が届くため、会社に知られる可能性があります。
そのため、自己破産を申し立てる前に、勤務先に自分の状況を相談し、事前に説明をしておくなど適切な対応を検討しておくとよいでしょう。
自己破産をすると賃貸を追い出される?
自己破産をしたからといって、賃貸物件から自動的に追い出されることはありません。
しかし、家賃を3か月以上滞納している場合は、裁判所から退去を求められるケースもあります。
追い出されないためには、自己破産前に家賃の支払い状況を確認し、家賃滞納を避けるための対策を検討する必要があります。
たとえば、自己破産手続きを進める前に支払いを済ませる、もしくは家賃の支払い方法を見直すことを考えるなどの方法が有効です。
自己破産すると携帯はどうなる?
自己破産をしても、未払いがなければ携帯電話は引き続き利用できます。
携帯は生活必需品としてみなされるため、没収される心配もいりません。
しかし、ブラックリスト(信用情報機関への事故登録)に載るため、新たに携帯電話を分割購入する際には審査に通らない可能性もあります。
その場合は以下の方法で端末を購入できます。
- 端末代金を一括で購入する
- 中古の端末を購入する
- 10万円以下で審査の甘い端末を分割購入する など
既存の携帯キャリアで契約を継続する倍でも、滞納がないか確認し、支払い状況を守る必要があります。
自己破産をするとパソコンは処分される?
自己破産をすると、20万円以上の価値がある財産は没収されますが、パソコンや家電などの生活必需品は通常、没収されません。
ただし、20万円以上の高価なゲーミングPCなど特定の条件に当てはまる場合は処分されることがあります。
自己破産ができないと言われたができないとどうなる?
自己破産ができない理由はいくつかあります。たとえば以下のような理由です。
- 免責不許可事由がある
- 返済能力があるなど自己破産の条件を満たしていない
- 弁護士や裁判所の費用が払えない
- 自己破産の手続きに非協力的だった など
うつ病でも自己破産できる?
うつ病を診断されていても自己破産の手続きは可能です。
自己破産は、支払い不能状態にあるかどうかが重要です。病気で返済ができない場合、その事実が審査に影響を与えることはありません。
自己破産は2回できる?
自己破産に回数制限はありませんが、過去7年以内に自己破産や個人再生を行っている場合、原則再申請は認められません。
免責不許可事由には「過去7年以内に自己破産や個人再生を行っていないこと」という決まりがあります。
とくに同じ理由で再度自己破産を申請する場合、裁判所が免責を認めない可能性があるため注意が必要です。
自己破産は何度も簡単にできるものではなく、金銭管理や借金をしない生活を見直すことが重要です。
自己破産すると相続財産はどうなる?
相続財産が自己破産の手続き前に相続された場合、その財産は没収の対象となります。
また、自己破産の手続き前に、相続してしまった借金も免除の対象です。一方で、自己破産の手続き後に相続された財産は没収対象になりません。
自己破産手続き前に相続が行われていれば、その財産が破産手続きに含まれないように、相続放棄を検討するとよいでしょう。
亡くなった人の借金や相続放棄できない借金は自己破産できる?
亡くなった人の借金や相続放棄できない借金でも、自己破産は可能です。
相続放棄できない借金に関しては、自己破産を申請することで免除される可能性があります。
まとめ

本記事では、自己破産について詳しく解説しました。
自己破産は、裁判所の許可を得て借金の返済義務を免除される手続きです。
支払い不能状態が続き、今後も返済の見込みがない場合などが条件となります。
自己破産の最大のメリットは、生活に必要な財産を保持したまま借金の返済義務をなくし、人生を再スタートできる点です。
借金の返済が困難で、収入以上の高額な借金を抱えている、または失う財産がないという場合には自己破産が有効な選択肢となります。
借金に苦しむ中で「もう自己破産しかないのか」と悩むこともあるでしょう。
しかし、自己破産を選択する際はそのメリットとデメリットをしっかりと理解することが重要です。
最も大切なのは借金を抱えて一人で悩むことなく、専門家に相談することです。
債務整理を検討している場合は、弁護士への相談をオススメします。
弁護士は、適切な債務整理手続きの選択肢を提案してくれます。
まずは無料相談を活用し、借金減額の方法についてアドバイスをもらうことをオススメします。
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