任意整理をすると連帯保証人になれない?理由や影響・対処法を解説!
投稿日: 2025.05.29 | 更新日: 2025.05.29

「借金の返済が苦しくて任意整理を検討しているけれど、任意整理をすると連帯保証人や保証人になれないって本当?」
「親が任意整理をしたら、子どもの奨学金の保証人にもなれないの?」
任意整理を考えるうえで、こうした「今後の保証人としての影響」について不安を抱く方は少なくありません。
任意整理をすると、信用情報に事故情報として登録されるため、一定期間は連帯保証人や保証人として認められないことがあります。
ただし、たとえば奨学金のように保証人が必要な場合でも「機関保証」という制度を利用すれば、保証人を立てなくても申し込むことが可能です。
この記事では、任意整理をした場合に連帯保証人・保証人になれない理由や、その影響範囲、具体的な対処法についてわかりやすく解説します。
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保証人と連帯保証人の違い
保証人と連帯保証人には、法的な立場や責任の重さに明確な違いがあります。特に重要な違いは、以下の3点です。
通常の保証人にはあり、連帯保証人にはない権利・利益 | |
①催告の抗弁権(民法452条) | 保証人が債権者に対し、まずは債務者に対して請求するように主張する権利 |
②検索の抗弁権(民法453条) | 保証人が、債務者には資力があることを証明し、債権者に対して、まずは債務者に対して請求をするように主張する権利 |
③分別の利益(民法456条) | 共同保証人が、主たる債務の額を保証人の頭数で割った数についてのみ保証債務を負担するという利益 |
これらの権利は通常の保証人には認められていますが、連帯保証人には認められていません。つまり、連帯保証人は以下のような責任を負う可能性があります。
- 債務者よりも先に返済を求められることがある
- 債務者に返済能力があっても、肩代わりを求められることがある
- ほかに保証人がいても、債務全額の返済義務を負う場合がある
このように、連帯保証人は債務者とほぼ同等の立場に置かれ、極めて重い責任を負うことになります。
任意整理をすると連帯保証人になれないのはなぜ?
ここからは、任意整理をすると連帯保証人になれなくなる理由を解説します。
任意整理をすると、基本的に保証人になれない
任意整理を含む債務整理を行った場合、当面のあいだは保証人や連帯保証人になることは原則として難しくなります。
そもそも保証人や連帯保証人とは、主債務者が借金を返済できなくなった場合に、その債務を代わりに支払う法的責任を負う立場です。こうした人的担保が存在することによって、貸し手は安心して資金を提供することができます。
しかし、任意整理をした人は「債務を自力で返済できなかった」という信用上の履歴が残るため、保証人としての信頼性を欠くと判断されるのが一般的です。
そのため、金融機関や貸与機関は、そうした人物を保証人として認めることはまずありません。
任意整理により、約5年間ブラックリストに載ってしまうから
任意整理を行うと、その情報は信用情報機関に「金融事故情報」として登録され、いわゆる「ブラックリスト」に載った状態になります。この期間中は、原則として新たな借入やクレジットカードの発行、さらには保証人・連帯保証人となることも難しくなります。
信用情報とは、個人の借入や返済状況などを記録したもので、個人信用情報機関が管理しています。金融機関などは、融資や契約の際にこの情報を参照し、申込者の信用力を判断します。
任意整理による金融事故情報の登録期間は、借金を完済してからおおよそ5年間とされています。この期間を過ぎれば、信用情報が回復し、再び保証人になることも可能です。
したがって、任意整理をしたからといって将来的に永久に保証人になれないわけではありません。早期に任意整理を行い、計画的に返済を完了することで、将来の選択肢を取り戻すことが可能です。
債務整理をしても5~7年は連帯保証人になれない
任意整理に限らず、個人再生や自己破産など他の債務整理手続きを行った場合でも、一定期間は連帯保証人としての契約を結ぶことは困難です。
いずれの手続きでもブラックリスト状態になるため、信用情報に事故情報が記録されている間は、金融機関などが保証人としての信用を認めないのが一般的です。
なお、個人再生や自己破産による信用情報への登録期間(ブラックリスト期間)は、各信用情報機関によって若干異なります。おもな信用情報機関における登録期間の目安は、以下のとおりです。
信用情報機関 | 個人再生・自己破産 | |
CIC(株式会社シー・アイ・シー) | 契約期間中および契約終了後5年以内 | |
JICC(株式会社日本信用情報機構) | 契約日2019/9/30以前 | 当該事実の発生日から5年を超えない期間 |
契約日2019/10/1以降 | 契約継続中及び契約終了後5年以内 | |
KSC(全国銀行個人信用情報センター) | 破産手続開始決定等を受けた日から7年を超えない期間 |
任意整理中・債務整理中も連帯保証人にはなれない
任意整理やほかの債務整理は、手続き中であっても信用情報に「金融事故」として登録されるため、連帯保証人にはなれません。
これは、弁護士に手続きを依頼した時点で、債権者に「受任通知」が送られ、債務整理が始まったことが信用情報機関に通知されるためです。
その結果、手続きが完了する前でもブラックリストに登録された状態となり、信用力を失うことになります。
したがって、債務整理の開始直後から、保証人や連帯保証人になることは基本的に不可能と考えておくべきです。
債務整理をしても賃貸住宅の連帯保証人になることはできる!
保証人にはさまざまな種類がありますが、債務整理を行って信用情報に金融事故が登録されている、ブラックリスト状態の場合でも、賃貸住宅の契約における保証人・連帯保証人になることは基本的に可能です。
その理由として、信用情報機関の情報を照会できるのは、消費者金融やクレジットカード会社などの金融機関に限られている点が挙げられます。不動産オーナーや仲介業者は信用情報機関へのアクセス権を持たないため、債務整理を行った経歴を確認することはできません。
ただし、近年では家賃の支払いにクレジットカードが利用できる物件も増えており、その場合は家賃保証会社などが信用情報を確認することがあります。この際、入居希望者だけでなく、連帯保証人予定者の信用情報が確認される可能性もあります。
そのため、ブラックリスト状態にある方が連帯保証人になる場合には、入居希望者に対し、口座振替など信用情報に基づかない支払い方法を選択してもらうよう相談することも一つの方法です。
保証人になれない場合の対処法
信用情報に載ってる間に保証人になるようにお願いされた場合、以下のような対処法があります。
- 他の保証人を探す
- 保証会社を利用する
- 保証人がいらない業者を探す
他の保証人を探す
まず考えられる対処法としては、別の保証人を立てることが挙げられます。信用情報に登録されるのは、あくまで任意整理など債務整理を行った本人の情報のみであり、配偶者や家族など第三者の信用情報に影響が及ぶことはありません。
そのため、たとえば子どもの借入に保証人が必要であり、父親が債務整理によって信用情報に事故情報が登録されている場合には、母親が代わりに保証人となるといった対応が可能です。
保証会社を利用する
保証会社を利用するのも一つの方法です。たとえば、多くの学生が利用する日本学生支援機構の奨学金制度では、「機関保証」という仕組みを選択することで、保証人を立てることなく奨学金を借りることが可能です。
機関保証を利用する場合には、別途保証料の支払いが必要となりますが、保証人を用意することが難しい状況においては有効な選択肢です。
保証人がいらない業者を探す
保証人を用意することが難しい場合には、そもそも保証人を必要としない業者を選ぶ方法もあります。
近年では、銀行や消費者金融においても、借入額が一定金額以下であれば保証人なしで融資を受けられるケースが増えています。
ただし、保証人不要のローン商品には、金利や手数料が比較的高めに設定されている場合もあるため、契約前にしっかりと条件を確認することが重要です。また、違法なヤミ金業者が保証人不要をうたって勧誘してくるケースもあるため、業者の正当性や登録状況を十分に確認する必要があります。
なお、自動車ローンなどにおいては、信販会社を通さずに販売業者が独自に提供している「自社ローン」が存在することもあります。こうしたローンは信用情報の照会を行わないことが多く、保証人なしでも契約できる可能性があります。
連帯保証人が任意整理をするとどうなる?
連帯保証人が任意整理を行うと、債権者から新たな保証人の設定を求められる可能性があります。これは、金融機関が契約後も定期的に債務者や保証人の信用情報を確認する「途上与信」を行っているためです。
任意整理によって信用情報に金融事故情報が登録されると、保証人としての信用力が失われるため、保証契約の見直しが必要になることがあります。
ただし、すべての金融機関が途上与信を行っているわけではありません。すでに保証人になっている場合は、事前に弁護士や司法書士へ相談し、対応を検討することが重要です。
今後保証人が必要になるケースとケース別対処法
ここからは、以下の場面別に連帯保証人を依頼された場合の対処法を紹介します。
- 奨学金
- 住宅ローン
- 賃貸契約
奨学金
子どもなどが奨学金を利用する際に連帯保証人が必要となる場合は、日本学生支援機構の「機関保証制度」の活用が有効です。
文部科学省による有識者会議の中間報告によれば、2019年時点で機関保証を選択した利用者の割合は56.3%に達しており、人的保証を選択するケースを上回っています。
また、大学や地方自治体が独自に運用している奨学金を活用する方法もあります。これらには、保証人が不要なものや、返済義務のない給付型奨学金なども含まれており、制度内容をよく確認することが大切です。
まずは、各学校の奨学金担当窓口や地方自治体の教育支援課などに問い合わせることで、利用可能な制度を確認することをおすすめします。
参考:文部科学省「独立行政法人日本学生支援機構奨学金事業における保証制度の在り方について(中間報告まとめ)」
住宅ローン
住宅ローンを利用する場合は、保証人不要のローンを検討するのが有効です。
地方銀行や信用金庫では保証人を求める場合もありますが、大手銀行やローン会社では、保証会社の利用や不動産に抵当権を設定することで、保証人なしで借りられる商品も多く存在します。
住宅ローンは高額であるため、物件自体を担保とする「物的担保」が基本となり、保証人(人的担保)は不要とされることが一般的です。
そのため、保証人を立てるのが難しい場合は、保証会社を利用し、抵当権で契約できるローンを優先的に探すとよいでしょう。
賃貸契約
任意整理後でブラックリストに登録されている期間中であっても、基本的に賃貸契約における連帯保証人となることは可能です。
これは、信用情報にアクセスできるのがおもに金融機関や信販会社に限られており、大家や不動産会社は個人の信用情報を確認できないためです。
ただし、家賃保証会社が信販系の場合には、信用情報を参照されることがあり、審査に通らない可能性があります。たとえば、オリコなどのクレジットカード会社系が該当します。
そのため、賃貸契約を結ぶ際には、信用情報を参照しない「独立系保証会社」が利用されている物件を選ぶことが一つの対策となります。不動産会社に事前に保証会社の種類を確認しておくと安心です。
以下に保証会社の一例を紹介します。
全国賃貸保証業協会(LICC)加盟会社 | アーク株式会社 エルズサポート株式会社 賃住保証サービス株式会社 株式会社レジデンシャルサービス |
賃貸保証機構(LGO)加盟会社 | 株式会社Casa(カーサ) 日本セーフティー株式会社 フォーシーズ株式会社 |
独立系保証会社 | アールエムトラスト株式会社 株式会社CAPCO AGENCY ジェイリース株式会社 新日本信用保証株式会社 日本賃貸保証株式会社(JID) |
任意整理をしたときの保証人・連帯保証人への影響
ここからは、任意整理をしたときの保証人・連帯保証人への影響を解説します。
保証人・連帯保証人は一括返済することになる
保証人や連帯保証人がついている借入を任意整理した場合、保証人・連帯保証人は債権者から借金の一括返済を求められる可能性があります。これは、債務者本人が任意整理を行うことで「期限の利益」を失うことが理由です。
期限の利益とは、契約上定められた返済期限までは返済を請求されないという、債務者に認められた法的権利のことです。この権利があることで、債権者から急な全額返済を求められることはありません。
しかし、多くの貸金契約では、以下のような場合に期限の利益を喪失すると定められています。
- 契約時に虚偽の申告(例:収入の過大申告など)を行った場合
- 指定された支払期日までに返済がなされなかった場合
- 任意整理など債務整理の手続きを開始した場合
債務者がこれらの理由により期限の利益を失うと、債権者は保証人・連帯保証人に対して残債の一括請求を行うことが可能になります。
保証人・連帯保証人は、債務者が返済不能となった場合に代わって返済義務を負う立場であるため、債務整理の影響を直接受ける点に注意が必要です。
分割での返済が認められる可能性もある
任意整理を行った結果、保証人や連帯保証人に対して一括返済が請求される場合でも、状況によっては分割での返済が認められる可能性があります。
債権者としても、一括での返済を求めたところで現実的に回収が困難であると判断される場合には、分割での支払いを受け入れることがあります。
特に、保証人や連帯保証人に返済能力がないと判断され、個人再生や自己破産に至るリスクがある場合には、分割返済によって一定の回収を図る方が現実的とされることがあります。
なお、これは任意整理に限らず、個人再生や自己破産の場合でも同様です。借主が分割で返済することを前提とした和解を結んでいる場合、その条件が保証人に引き継がれる形で分割返済が認められるケースもあります。
ただし、保証人自身が債権者と直接交渉しても、必ずしも分割払いに応じてもらえるとは限りません。そのため、分割返済を希望する場合は、早めに弁護士へ相談して対応することが重要です。
保証人への影響を少なくしたい人は任意整理が一番おすすめな理由
債務整理には3種類の手続きがあるものの、保証人への影響を少なくしたい人におすすめなのは任意整理です。ここからは、任意整理がおすすめな理由を解説します。
個人再生や自己破産では保証人を除外できない
個人再生や自己破産の手続きでは、保証人が付いている借金であっても、手続きの対象から除外することはできません。
これらの手続きは裁判所を通じて進められる法的な債務整理であり、債務全体を包括的に処理する仕組みであるため、一部の債務のみを恣意的に除外することは認められていません。
仮に、保証人がついている借金を手続きから除外し、個別に返済を続けようとした場合、他の債権者から不公平と見なされ、手続きに異議を唱えられるおそれもあります。
そのため、保証人への影響を最小限に抑えたいと考えている場合は、裁判所を通さず債権者ごとに交渉できる任意整理の方が適しているといえます。
保証人つきの借金を任意整理から除外すれば影響はない
前述のとおり、個人再生や自己破産は裁判所を通じて行われる法的手続きであり、すべての債務が手続きの対象となるため、保証人がついている債務を任意に除外することはできません。
一方、任意整理は裁判所を介さず、債権者と個別に交渉して返済条件の見直しを図る手続きです。そのため、債務者自身の判断で、保証人が付いている債務を手続きの対象から除外することが可能です。
たとえば、複数の債権者から借入がある場合、保証人が付いていないA社の債務のみを任意整理し、保証人がいるB社の債務は手続きから除外するという柔軟な対応が認められます。
債権者ごとに個別交渉を行う仕組みであるため、除外された債務について他の債権者が把握することもありません。
なお、まれに保証人付きの債務も手続きに含める必要があるケースもあります。しかし、その場合でも保証人への影響を最小限に抑えるための対応策を弁護士が状況に応じて検討してくれるため、安心して相談しましょう。
保証人・連帯保証人と一緒に任意整理をする方法もある
前述のように、借入先が複数ある場合には、保証人や連帯保証人が付いていない債務のみを任意整理の対象とし、保証人が関与している債務を除外することが可能です。
しかし、保証人や連帯保証人が付いている債務そのものを任意整理の対象にする場合には、その保証人を手続きから除外することはできません。
このようなケースでは、債務者本人と保証人・連帯保証人がそろって任意整理を行うという方法も検討されます。
債務者と保証人が同時に任意整理をすることで、双方の返済負担を軽減できる可能性があります。ただし、保証人・連帯保証人も任意整理を行うことにより、本人と同様に信用情報機関に金融事故情報が登録され、いわゆる「ブラックリスト状態」となる点には注意が必要です。
保証人としての責任を免れる一方で、信用面での不利益を受ける可能性があるため、このような対応を選択する際はあらかじめ弁護士に相談し、メリット・デメリットを十分に理解したうえで判断することが重要です。
保証人・連帯保証人に迷惑をかけずに債務整理したいなら弁護士に相談しよう
債務整理を検討する際、多くの方が「保証人・連帯保証人にできるだけ迷惑をかけたくない」と考えるものです。
しかし、借入額や返済状況、収入の状況などによっては、どうしても保証人・連帯保証人に影響が及ぶ可能性があります。
そのため、保証人等への影響を最小限に抑えながら債務整理を進めたい場合には、早めに弁護士へ相談することをおすすめします。
弁護士は、債務整理の手段や進め方を検討する際に、保証人・連帯保証人への影響を踏まえたうえで最適な方法を提案し、必要に応じた対応策も講じてくれます。
安易に手続きを進める前に、専門家に相談し、リスクを把握したうえで判断することが重要です。
まとめ
債務整理を行うと、信用情報に金融事故情報が登録され、原則として約5年間は保証人・連帯保証人になることができません。
ただし、近年では保証人を必要としない金融業者も増えており、こうした業者を利用したり、保証会社を活用することで、一定のデメリットを回避することも可能です。
一方で、すでに保証人となっている方が債務整理を行う場合には、債権者から代替の保証人を求められる可能性があるため、慎重な対応が求められます。
保証人への影響を最小限に抑えるためにも、まずは弁護士などの専門家に相談し、自身の状況に合った最適な解決策を検討することをおすすめします。
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