自己破産の陳述書には何を書けばいい?思い出せない時の対処法も紹介
投稿日: 2025.05.28 | 更新日: 2025.05.28

自己破産をご検討中の方で、「陳述書に何を書くべきなのかわからない」とお悩みの方も多いのではないでしょうか。
自己破産を申し立てる際には、裁判所に対して「陳述書」という重要な書類を提出する必要があります。
陳述書は、借金を負うに至った経緯や自己破産を選択せざるを得なくなった事情を詳細に記載する書類であり、免責許可の判断において重要な役割を果たします。
多くの方が「陳述書」と聞くと反省文のようなものを想像されがちですが、実際には「なぜ借金を負ったのか」「なぜ自己破産をしなければならなくなったのか」という客観的な事実を時系列で記載するものです。
適切な陳述書の作成は、自己破産手続きを円滑に進めるために不可欠であり、記載内容や書き方には注意すべきポイントが数多く存在します。
本記事では、自己破産における陳述書の意義から具体的な記載方法、作成時の注意点まで、専門的な観点から詳しく解説します。
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自己破産における陳述書とは
出典元:裁判所
自己破産を申し立てる際には、陳述書の提出が必要となります。陳述書とは、自己破産に至った経緯や借金の内容について正確に報告するために裁判所に提出する書類です。
自己破産は、合法的に借金を減額する債務整理のうちの1つであり、すべての借金の返済義務を帳消しにする強力な手続きです。しかし、その分簡単に認められるわけではなく、陳述書によって自己破産に至った経緯を詳細に説明する必要があります。
陳述書は免責許可の申立書などと一緒に提出が必要な書類で、申立人が作成しなければなりません。裁判所は陳述書の内容を基に、申立人の状況を把握し、免責許可の可否を判断します。
陳述書に記載すべき内容
陳述書の内容は申し立てる裁判所によって異なりますが、一般的には以下のような項目の記載が求められます。
- 過去10年前から現在に至る経歴
- 家族関係等
- 現在の住居の状況
- 今回の破産申立費用の調達方法
- 破産申立に至った事情
- 免責不許可事由
以下で、詳しい内容を解説します。
①過去10年から現在に至る経歴
ここでいう経歴とは、職歴のことです。アルバイトなどの職歴も含めてすべて記載する必要があります。
自己破産に至った経緯に関係がある場合は、10年以上前の職歴であっても記載が必要です。
あまり長くなりすぎなければ、すべての職歴について最初から記載してしまった方が無難です。
②家族関係等
同居家族はもちろん、本人の収支に関係がある場合は別居している家族についても記載する必要があります。
裁判所によっては、家族の年収についても記入を求められるケースもあります。
陳述書に家族関係について記載するのは、本人の経済状況を判断するためです。
同居している家族がいる場合、その人たちの生活費などの支出があるはずです。また、別居している家族のための医療費など、家族関係は本人の経済状況に関わる可能性が多くあります。
陳述書に記入された家族に直接影響があるわけではないため安心してください。
③現在の住居の状況
いくつかある選択肢の中から自分の状況に合うものを選択します。
自己破産をすると、破産した本人名義の持ち家に住んでいる場合には、借金の返済に充てるために家を引き払わなくてはなりません。
また、他人名義の家に住んでいる場合や賃貸の場合であっても、家賃が発生しているのであれば本人の経済状況に関わってきます。
破産を申し立てる人が、どのような住居の状況に置かれているかは重要な判断材料となります。
住居の状況を証明するための資料添付
賃貸か持ち家かによって、添付する資料は変わります。
- 賃貸の場合…賃貸借契約書の写し
- 本人または親族の持ち家の場合…不動産登記の履歴事項証明書
④破産申立費用の調達方法
出典元:申立て等で使う書式例(民事手続) – 盛岡地方裁判所
自己破産の手続きが終了すると、破産申立のために借りた費用も返済義務がなくなるため、費用の調達方法について詳細な説明が必要です。
⑤【重要】破産申立に至った事情
出典元:申し立て等書式例_高知地方裁判所
陳述書の中でも特に重要なのが、破産申立てに至った事情です。以下の項目について時系列でわかりやすく記載する必要があります。
- 債務(借金)発生の原因
- 債務増大の原因
- 支払不能に至る経過
- 支払不能となった時期
この部分は少なくともA4用紙で1枚分程度は記載することが推奨されます。借入れそのものについてだけではなく、借入れの原因となった出来事についても、時系列でできる限り正確に記載する必要があります。
時系列での箇条書きが推奨
文章でも箇条書きでも、自分の書きやすい形式で記載できます。
ただし、時系列に記載する必要があるため、書きづらい場合は箇条書きが推奨されます。以下が記述例です。
- 2010年3月:大学進学のために日本学生支援機構から200万円借り入れる。
- 2014年4月:就職先が見つからず、アルバイト生活開始。当時の手取り月収はおよそ17万円。同時に奨学金の返済がはじまる。返済額は月15000円。
- 2015年10月:就職。手取り月収が25万円となる。奨学金の残債はおよそ170万円。
- 2016年5月:母が病気で倒れ、介護が必要となる。頼れる親族もいなかったため、ヘルパー代月5万円を自身で負担する。
- 2017年3月:生活費および奨学金返済に充てるため、○○消費者金融から40万円借り入れる
特に、借入が発生した時期と金額に関しては正確に書くことを求められるため、注意してください。
破産申立に至った経緯を記載する理由
本当に自己破産をするべきかどうか裁判所が判断するために、陳述書で借金に関する詳しい事情を説明する必要があります。
具体的には、陳述書に詳しく経緯を記載すれば、以下のようなことを判断するための材料になります。
- 本当に支払不能な状況なのか
- 借金をしたことにやむを得ない事情があったのか
- 自己破産をした後に生活を立て直せるかどうか
⑥免責不許可事由
免責不許可事由とは、自己破産が認められないような行為・事情のことです。
自己破産を認めるかどうかは裁判所による審査もありますが、免責不許可事由に該当するものがあるかどうかは自身で申告しなくてはなりません。
主な免責不許可事由は以下の通りです。
- ギャンブルや浪費が原因で借金を作った場合
- 過去7年以内に自己破産を行った場合
- 破産することがわかっていて新たに借金をした場合
- 陳述書など裁判所へ提出する書類の中で虚偽の記載をした場合など
実際のところ、ギャンブルが原因の借金など免責不許可事由がある場合でも、裁判所の判断によって自己破産が認められるケースは多く存在します。
免責不許可事由があっても借金の免除が認められることを「裁量免責」と呼びます。
ただし、裁量免責を認められるためには、陳述書以外に反省文を提出するよう求められる可能性が高くなります。
陳述書作成時の注意点
以下の点を守らないと、自己破産が認められない可能性もあるため注意が必要です。
虚偽の内容を記載しない
自己破産が認められたいからといって、借金額を偽ったり、借金をした経緯を偽ることは禁止されています。
虚偽が発覚してしまうと、自己破産が認められないだけではなく、詐欺破産罪という罪に問われる可能性もあります。
自己破産の手続きにおける虚偽は確実に発覚すると考えた方が良いでしょう。
自己破産の手続きにおいては、破産管財人という自己破産の担当者が裁判所によって選ばれます。
破産管財人は、申立人の財産やお金の動きを過去にまでさかのぼって詳細に調査するのが一般的です。
破産管財人には、多くの破産者を見てきている弁護士が選ばれるため、財産隠しや虚偽の記述は容易に発覚します。
借金に関する記憶を曖昧にしない
陳述書の中でも、自己破産に至った経緯や借金の理由などは特に重要視されるものです。
自己破産という選択がやむを得ない事情であると判断されるためには、借入の時期や金額などまで明確に記述する必要があります。
書き直しを防ぐためにも、弁護士に依頼して協力してもらうことが推奨されます。
弁護士に自己破産を依頼すれば、貸金業者から取引履歴を取り寄せるなどして、借金の経緯について整理してくれルため、安心です。
弁護士に手伝ってもらいながら陳述書を作成すれば、曖昧な部分をなくせます。
申し立てる裁判所の様式に従う
申し立てる裁判所によって陳述書のフォーマットは異なるため、必ず自己破産を申し立てる裁判所での様式に従って記入する必要があります。
インターネットで入手した陳述書に記載して裁判所に持参したところで、受理されない可能性があるため注意が必要です。
丁寧な言葉遣いで記載する
丁寧な言葉遣いで記載することも重要です。裁判所の担当者は公正に判断をしてくれますが、人間です。
あまりに乱暴な書き方をしてしまうと、「反省していない」とみなされて自己破産が認められづらくなるケースも考えられます。
場合によっては陳述書の他に「反省文」が必要
場合によっては、陳述書に加えて「反省文」の提出を求められるケースもあります。
反省文の提出が必要になるのは、基本的に「免責不許可事由」に該当する場合です。
反省文には以下のような内容を記載します。
- 借金に至った経緯と理由、その時の自分の心情
- 借金をしたことで周りにどのような影響を与えてしまったか
- 今後の生活をどのように立て直していくつもりか
- 債権者たちへの謝罪の言葉
反省文の内容についても、弁護士がチェックをしてアドバイスをしてくれるため、不安な場合は弁護士に依頼することが推奨されます。
以下の記事は、自己破産の反省文について詳しく解説していますので、併せて参考にしてください。
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まとめ
自己破産の陳述書は、借金の経緯や理由を正確に記載する重要な書類です。陳述書には職歴や家族関係、住居の状況、破産申立費用の調達方法などの基本的な情報に加えて、最も重要な「破産申立てに至った事情」を時系列で詳細に記載する必要があります。
記載にあたっては、虚偽の内容を避け、事実を明確かつ丁寧な言葉遣いで記述することが求められます。ギャンブルや浪費などの免責不許可事由がある場合でも、裁量免責が認められる可能性があるため、正直に記載することが重要です。
場合によっては陳述書のほかに反省文の提出も求められることがあります。陳述書に記載すべき内容が思い出せない場合や、適切な記載方法がわからない場合は、専門知識を持つ弁護士に相談することが最も確実な方法です。
弁護士への相談は、多くの事務所で無料相談や分割払い、後払いに対応しています。経済的な負担を心配せずに専門的なサポートを受け、安心して手続きを進められるでしょう。
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