家族の借金が返せないとどうなる?差し押さえ・相続・支払い義務を解説
投稿日: 2025.03.28 | 更新日: 2025.03.28

家族が借金を返済できない場合、親や兄弟、子どもに支払い義務が生じるのではないかと不安に思う方は多いはずです。
しかし、借金は借りた本人に支払い義務があるため、家族という理由だけで支払い義務が生じることはありません。
また、貸金業法では、家族に対する取り立ても禁止されています(貸金業法第21条1項7号)。
ただし、例外的に家族が支払い義務を負うケースもあるため、注意が必要です。
また、家族が返済を続けられるように協力して支えてあげることが大切です。
家族の借金が発覚した時にとるべき行動3選

家族の借金は、保証人などでない限り、他の家族に返済義務が生じるわけでありません。
ただし、「家や車が差し押さえられるのではないか」「家族の借金を相続するのではないか」と不安な人もいるでしょう。
家族の借金が発覚した際に検討するべき行動は、以下の3つです。
①冷静に借金の状況を整理する
②一緒に返済計画を立てる
③家族に債務整理をすすめる
それぞれ簡単に解説していきます。
冷静に借金の状況を整理する
まずは、家族の借金の全容をつかむ必要があります。
貸金業者からの電話や督促状などから借金が発覚するケースが多いですが、発覚した1社からの借入以外にも複数の借金がある可能性もあります。
具体的には、以下の事項について確認して整理しましょう。
・借入先の会社名
・借入額
・借金をしている期間
・滞納している借金の有無
・借金の利率
・いくらの借金をどの程度返済しているのか
・一括請求や裁判を起こされていないか
・借金に連帯保証人や抵当権はついていないか
「家族には借金についてバレたくない」という後ろめたさもあるでしょうし、借金の全容について本人から聞き出すのは苦労するかもしれません。
決して問い詰めたり高圧的な態度をとるのではなく、家族として今後のことを一緒に考えていきたいという協力的な姿勢で話し合うようにしましょう。
また、家族が亡くなった場合、配偶者や子どもに相続の権利が発生し、借金を引き継ぐおそれがあります。
その場合に、借金の返済状況や裁判の有無がわからないと、実は時効であった借金を返済してしまうケースもあるため注意が必要です。
一緒に返済計画を立てる
家族の借金状況が整理できたら、一緒に返済計画を立てていきましょう。
借入の総額や月々の返済額、今後支払うことになる利息などを整理して、現実的な返済が可能かどうか確認してください。
現状で完済するまでに時間がかかりそうな場合は、家族みんなで節約をしたり、収入を増やすために副業を始めるなども検討しましょう。
また、返済計画を立てる際には、消費者金融や銀行などが提供している返済シミュレーターを用いると便利です。
家族に債務整理をすすめる
借入額と収入などの状況から返済していくのが困難だと判断できる場合は、家族に債務整理をすすめてあげるのも選択肢のひとつです。
債務整理とは、法律の力を使って合法的に借金を減額する手続きであり、以下の3つがあります。
任意整理 | 弁護士などの専門家を通じて債権者(お金を借りている相手)と直接交渉して、借金の利息や遅延損害金(延滞料のようなもの)をカットしてもらう手続き |
個人再生 | 裁判所に申し立てて借金を最大で10分の1まで減額してもらう手続き |
自己破産 | 裁判所に申し立てほぼすべての借金の返済義務を帳消しにしてもらう手続き |
誰にでも、やむを得ない事情によって返せるつもりだった借金が返せなくなってしまう可能性はあります。
そのような方が生活を立て直すためのセーフティーネットとして、債務整理は誰でも利用できる制度です。
ただし、債務整理をすると、借金の返済が楽になる代わりに以下のようなデメリットもあります。
・債務整理後一定期間ブラックリストになってしまいクレカやローンが使えなくなる
・保証人や連帯保証人がついている借金がある場合は保証人が代わりに請求されてしまう
・自己破産をする場合は持ち家などの財産を手放さなくてはいけない など
どの債務整理を選ぶべきかどうかは、借金や収入状況によって異なります。
自分に適した債務整理を選ぶには、借金の専門家である弁護士に相談するのが一番です。
しかし、借金はプライベートな問題であるため、債務者本人しか債務整理については相談できません。
借金に悩んでいる家族がいたら、弁護士に相談するようにうながしてあげるのもいいでしょう。
借金に関する相談であれば、ほとんどの弁護士事務所が無料で相談に応じてくれます。
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債務整理とは?弁護士がメリットデメリットや費用をわかりやすく解説
家族が借金を返さないとどうなる?

「家族が借金を返さないと自分にも悪い影響が出るのでは…。」と心配されている方も多いのではないでしょうか?
ここでは、家族が借金を返さないとどうなるのか解説します。
家族や兄弟に支払い義務は及ばない
家族が借金を返さないことで一番不安なのは、「他の家族に支払い義務があるのではないか?」「借金を背負わなければならないのではないか?」ということかと思います。
しかし、基本的に家族がした借金は、他の家族に支払い義務が生じません。借金をした本人に返済義務があります。
借金の支払いを家族や友人などの契約者以外の第三者に対して借金の肩代わりを要求することは貸金業法によって禁止されています。
(取立て行為の規制)
第二十一条 貸金業を営む者又は貸金業を営む者の貸付けの契約に基づく債権の取立てについて貸金業を営む者その他の者から委託を受けた者は、貸付けの契約に基づく債権の取立てをするに当たつて、人を威迫し、又は次に掲げる言動その他の人の私生活若しくは業務の平穏を害するような言動をしてはならない。
中略
七 債務者等以外の者に対し、債務者等に代わつて債務を弁済することを要求すること。
【一部引用:貸金業法 – e-Gov】
このように、元に借りた人(債務者)以外に対して、借金の返済を要求することは禁止されています。
万が一、貸金業者などから家族が肩代わりするように督促を受けたとしたら、その業者は闇金などの違法業者である可能性が非常に高いです。
差し押さえられるのも本人の財産だけ
借金を返済しないと、裁判で訴えられて最終的に財産を差し押さえられることになります。
差し押さえられる財産も基本は、借金を返済しない人の財産だけです。
差し押さえで失う財産は次の通りです。
動産 | 車、ブランド品、貴金属など価値のあるもの |
動産 | 車、ブランド品、貴金属など価値のあるもの |
不動産 | 家や土地 |
一方で次の財産は差し押さえが禁止されています。次のような財産を差し押さえてしまうと、最低限の生活ができなくなるからです。
・66万円までの現金
・生活や仕事に必要なもの(家財や寝具、衣類、仕事で使うPCなど)
・生活保護や年金 など
借金を放置するとリスクがありますが、全てのものが差し押さえられるわけではありません。
基本的には、借金をした人の財産が差し押さえられますが、家や車も対象となるため、家族が影響を受ける可能性はあります。
ただし、一般的な借金なら、売却の手間がかかる持ち家や車よりも先に、銀行口座のお金や給料などから差し押さえを受けるケースが多いです。
税金の差し押さえは家族に影響する可能性がある
一方で税金の差し押さえは家族に影響する可能性があります。
税金の滞納は、督促状が届いてから10日を経過すると、裁判なしで差し押さえが実行されます。
税金の差し押さえは、銀行口座のお金だけでなく、車や家を差し押さえるケースもあります。
また、年金の場合は、滞納するとその本人だけでなく、世帯主や配偶者の財産が差し押さえられるリスクがあります。
(保険料の納付義務)
第八十八条 被保険者は、保険料を納付しなければならない。
2 世帯主は、その世帯に属する被保険者の保険料を連帯して納付する義務を負う。
3 配偶者の一方は、被保険者たる他方の保険料を連帯して納付する義務を負う。
税金の場合は、「家族に債務整理をすすめる」で紹介した債務整理(さいむせいり)でも免除できないため、役所で分割納付を相談するか免除制度を利用してください。
住宅ローンを滞納すると家を失う可能性がある
また、住宅ローンを滞納すると、ローンを組んだ金融機関は借金を返済できないと判断して、自宅を売却する可能性があります。
金融機関は、高額な住宅ローンが支払いができなくなるリスクに備えて、支払いが滞った家を売却する権利を持っているのです(抵当権)。
滞納すると即座に自宅を売却されるわけではないですが、3~6か月滞納すると一括返済を求められ、それ以降競売(裁判所が主導するオークション)で売却されることになります。
もし住宅ローンの支払いができなくなると、一緒に住んでいる家族も家を失う可能性があります。
家族がブラックリストになる心配もない
借金を2~3ヶ月の長期間滞納していると、借金を借りている方はブラックリストになってしまいます。
ブラックリストとは、個人の借金に関する情報を管理している信用情報機関に、滞納や債務整理などの事故情報が登録された状態のこと。
消費者金融や銀行などの金融機関やクレジットカード会社は、信用情報機関の情報をもとに審査を行うため、ブラックリストになっている間はクレカやローンが契約できなくなります。
ただし、滞納や債務整理などによってブラックリストとなるのは、借金を滞納した本人のみです。
家族のうちの誰かが借金を抱えているからと言って、他の家族までブラックリストになる心配はありません。
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車が引き上げられる可能性がある
車のローン返済が滞ると、所有権留保の契約により、ローン会社が車を回収(引き上げ)する可能性があります。これは、ローン完済までは車の正式な所有者がローン会社になっているためです。実際には督促の後、催告状が届き、それでも支払いがなければ車両回収となるのが一般的です。
また、住民税や自動車税を滞納すると、市区町村や国によって車が差し押さえられる場合があります。税金滞納による差し押さえは、場合によっては家族の生活にも大きな影響を及ぼす可能性があるため注意が必要です。
家族カードなどが利用できなくなる
クレジットカードの本会員(契約者)が支払いを滞納すると、強制的にカードが停止・解約されます。この影響は本会員だけでなく、本会員が発行した家族カードにも及びます。
家族カードはあくまで本会員の信用で発行されているため、本会員が滞納すると、家族カードも同時に利用停止となり、買い物や公共料金の支払いなどが突然できなくなる可能性があります。
さらに、支払い遅延や滞納情報は本会員の信用情報(いわゆるブラックリスト)に登録され、住宅ローンや自動車ローンの審査に通らなくなるリスクも高まります。
契約者などが携帯代を払わないと解約になる
携帯電話の契約者と実際の使用者が異なることは珍しくありません。例えば、親名義で契約した携帯を子どもが使用しているケースなどが挙げられます。
しかし、契約者や使用者に関わらず、携帯料金の支払いが滞ると、携帯は強制解約となり、利用できなくなります。
特に注意が必要なのは、契約者と支払いを行う人が異なる場合です。例えば、契約者が自分で、家族が料金を支払っている場合、その家族が支払いを滞納すると携帯は解約されるだけでなく、契約者の信用情報に影響が及ぶ可能性があります。
例外的に家族の借金の支払い義務が生じるケース

基本的には、家族の借金が発覚したとしても、支払い義務は本人だけのものです。
しかし、以下のケースでは、例外的に家族の借金を支払わなくてはいけません。
・保証人・連帯保証人になっている場合
・親や兄弟が亡くなり借金を相続した場合
・配偶者が結婚後の生活のために借金をした場合
・自分の名義を貸して借金をした場合
それぞれ簡単に紹介していきます。
保証人・連帯保証人になっている場合
家族の借金の保証人や連帯保証人になっている場合は、家族が借金を支払えなくなった際に代わりに返済をしなくてはいけません。
保証人とは、契約者本人が契約通りの返済義務を果たせなかった際に、本人の代わりに支払いを行う立場であるためです。
ただし、家族に勝手に保証人・連帯保証人にされていた場合は、正当な手続きを踏めば契約を無効にできます。
勝手に保証人にされていることが発覚した際は、あせらずに弁護士に相談してください。
親や兄弟が亡くなり借金を相続した場合
借金を抱えている親や兄弟が死亡し、自分が相続人となった場合は、家族の借金を返済しなければいけない可能性があります。
相続人は、不動産や預貯金などのプラスの財産だけでなく、借金などのマイナスの借金も相続しなければなりません。
相続権が発生するのは、配偶者、子ども、親、兄弟です。
ただし、相続放棄や限定承認などの手続きをとれば、自分が借金を負担する必要はなくなります。
相続放棄 | 借金も含めてすべての相続を拒否する | 初めから「相続人でなかった」ことになる。借金を一切背負わない。 |
限定承認 | 受け取った財産の範囲内で借金を返す | プラスがあれば相続、マイナス超過分は返済不要。手続きが複雑なので弁護士相談推奨。 |
相続放棄や限定承認などの相続に関する手続きは、家族が死亡したことにより自分が相続人となった事実を知った時から3ヶ月以内に行わなければならないので注意しましょう。
配偶者が結婚後の生活のために借金をした場合
結婚をして共に暮らす夫婦は、「互いに協力し扶助しなければならない」と民法第752条によって定められています。
本来は借金の返済義務は借入をした本人だけのものです。
しかし、夫婦のどちらか一方が結婚後の暮らしのために借金をした場合は、二人で返済義務を背負うことになります。
たとえば、夫婦で暮らす部屋の初期費用や、子供の教育費用のための借金などが「結婚後の暮らしのための借金(日常家事債務)」にあたります。
これらの日常家事債務について、契約者が支払いができなくなった場合は、もう一方の配偶者が返済をしていかなくてはいけなくなる可能性があります。
自分の名義を貸して借金をした場合
家族が勝手に自分の名義を使って借金をした場合、基本的に支払い義務を負うのはその借金を実際に行った本人です。例えば、親が子どもの名義で無断で借金をした場合、原則として返済義務は親にあります。
しかし、貸金業者がその説明に納得しない場合、名義を使用された人に対して裁判を起こす可能性があります。その場合、裁判では「実際に契約したのは誰か」「名義を使用することを本人が認めていたか」といった点が争点となります。
原則として、借金の責任は実際に借りた人にありますが、裁判で名義人にも責任があると判断されると、返済義務が生じる可能性があります。
もし、自分の名義を無断で使われたことに気付いたら、すぐに返済するのではなく、まずは借入先に事情を説明し、支払う意思がないことを伝えた上で、弁護士に相談することが重要です。
なお、自分の意思で名義を他者に貸した場合は、支払い義務を負うことになります。そもそも名義貸しは法律違反であり、貸金業者は借り手本人の返済能力を基に審査を行っているため、名義貸しをすると詐欺の共犯として処罰される可能性もあります。
身内の借金を調べる方法はある?
家族が借金をしていると不安ですが、身内の借金を調べる方法はあるのでしょうか?
結論から言えば、身内の借金を調べる方法はありません。
個人の借り入れの返済や支払いの記録は、信用情報として信用情報機関に記録されています。
信用情報機関に情報開示を求めることで、個人の借り入れの記録を調べることはできますが、確認できるのは次の人だけです。
・本人
・成年後見人などの法定代理人
・本人から委託された人
・法定相続人やその法定代理人
委託があった場合や、本人が亡くなっている場合なら開示は可能です。
ただし、本人の同意なしや、本人に内緒で調べることはできません。
この場合は、本人の通帳から銀行などから振り込んで返済している記録を確認するか、自宅に届く督促状を確認するしかないでしょう。
【参考:郵送で開示する – CIC】
【参考:開示対象者本人以外が開示申し込みできますか? – JICC】
【参考:インターネット開示について – 一般社団法人 全国銀行協会】
家族の借金が発覚したら縁切りするべき?

家族の借金が発覚したからといって縁を切る必要はありません。
保証人や連帯保証人になっていない限り、家族の借金の返済義務は本人だけのものだからです。
家族が借金を支払えなくなったからといって、他の家族がその借金を背負わされる心配はありません。
もちろん、家族が高齢で相続が不安という場合は、亡くなった段階で相続放棄をするなどの選択をとりましょう。
また、どうしても不安なら家族と話をして債務整理をすすめるのがおすすめです。
弁護士に相談することで、そもそも債務整理が必要かどうか、債務整理をするとどの程度減額されるのかなど具体的なアドバイスがもらえます。
不安な場合は、情報収集がてら無料相談を活用して弁護士に相談してみましょう。
家族の借金に関してよくある質問Q&A
最後に、家族の借金に関してよくある質問をまとめておきます。ぜひ参考にしてください。
兄弟の借金の支払い義務はある?
兄弟や親など血縁の家族であっても、契約者や保証人以外が借金の支払い義務を背負わされることはありません。
ただし、兄弟や親などが死亡し、相続した財産の中に借金があった場合は、相続人が借金を背負わなくてはいけないケースもあります。
身内の借金を返さないとどうなる?
身内の借金について、他の家族が借金の返済義務を追わされることはありませんし、取り立てを受ける心配もありません。
万が一、保証人や連帯保証人でもないのに家族の借金について督促を受けたら、闇金などの違法業者である可能性があるため、すぐに警察に消費者センターに相談しましょう。
まとめ
身内が負った借金については、たとえ親や子ども、兄弟であっても、基本的にあなたに支払い義務は発生しません。また、あなたの財産や信用情報にも原則として影響はありません。
しかし、連帯保証人になっていたり、相続人として借金を引き継ぐ場合には、支払い義務が生じる可能性があるため、注意が必要です。
家族の借金が発覚した際には、まず借入状況を整理し、返済が難しそうであれば弁護士への相談を検討してください。
借金の返済が困難な場合は、債務整理という手段が有効です。手続きを進めるかどうかは、弁護士に相談した上で判断しても問題ありません。
まずは、債務整理の必要性も含めて、家族と一緒に弁護士に相談してみましょう。
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