支払督促に異議申し立てをした後の和解までの流れは?対処法は?
投稿日: 2025.05.20 | 更新日: 2025.05.20

「支払督促が届いたら2週間以内に異議申し立てを」とよく言われます。では、異議申し立てをしたあとの流れはどうなるのでしょうか?
支払督促は放置すれば、財産や給料などを差し押さえられます。また、差し押さえられた財産・給料は返金してもらえません。
差し押さえを回避するには、異議申し立てを行い、裁判での話し合いが重要です。
本記事では、支払督促に異議申し立てをした場合の和解までの流れや、支払督促を無視するリスクについて詳しく解説します。本記事を参考に、手遅れになる前に弁護士に相談するとよいでしょう。
支払督促に異議申し立てをして和解をするとどうなる?
支払督促は、債権者(貸主)が裁判所へ申請すれば、簡単な書類審査だけで出せる支払命令です。
受け取った債務者(借主)は2週間以内に異議申し立てをしなければなりません。ここでは、支払督促に異議申し立てをしたあとについて解説します。
支払督促に異議申し立てをすると通常訴訟になる
支払督促に異議申立てをすると、通常訴訟に移行します。まり、裁判になるということです。
ただし裁判といっても、有罪か無罪かを決めるわけではありません。
通常訴訟では支払法を決める
異議申し立て後の通常訴訟では、今後の返済スケジュールについて債権者と話し合います。
裁判は基本的に争う場ですが、業者からお金を借りている場合、借りたことや返済する金額は合っているケースがほとんどです。
争う必要がないため、支払方法について決めるのが主な内容となります。双方で話し合って合意することを、「裁判上の和解」と呼びます。
返済ができなくなると差し押さえを受ける恐れがある
返済ができなくなると給料などの差し押さえを受ける可能性があります。
和解するときには、お互いが合意して話し合いが終了したときの和解条件を、裁判所が書類に記入します。
和解条件を記入した文書を和解調書といいます。これが、強制執行(差し押さえ)の準備に必要な債務名義(さいむめいぎ)になります。
債務名義は、強制執行許可証のようなものです。そのため、和解後に返済が滞ると、差し押さえを受ける可能性が高くなります。
返済ができなくなった場合には、いつでも財産を差し押さえられると思っておいたほうがよいでしょう。
支払督促に異議申し立てをした場合の和解までの流れ
支払督促に異議申し立てをすると、和解までの流れは以下のように進みます。
- 支払督促が届いたら2週間以内に異議申し立てをする
- 第一回口頭弁論期日までに答弁書を作成・返送する
- 第一回口頭弁論:論点の絞り込み
- 続行期日:内容の議論
- 証拠調期日:証人尋問
- 判決・和解
- 後日送られた和解調書に従い支払う
以下で各手順の詳細を解説します。
1.支払督促が届いたら2週間以内に異議申し立てをする
支払督促が届いたら2週間以内に異議申し立てをしましょう。
異議申し立てをすると裁判になりますが、面倒だからといって裁判を欠席するのは避けるべきです。
欠席すると、債権者の主張が全面的に認められて差し押さえになる可能性が高くなります。
また、異議申し立てをせず無視をしても、財産を差し押さえられてしまいます。
結局差し押さえを回避するには、異議申し立てをして返済方法を話し合うほかありません。
東京簡易裁判所の異議申立書の例を紹介します。
届いた支払督促に同封されている異議申立書に、以下の必要事項を記入して返送します。
- 支払督促に対する言い分(分割払いを希望するなど)
- 返済方法の希望
- 今後の書類の送付先などの質問に対する回答
- 債務者の氏名・住所・電話番号 など
また、東京簡易裁判所では異議申立書の書き方も公開しています。
異議申立書が同封されていない場合は、裁判所のホームページからダウンロードして印刷してください。
2.第一回口頭弁論期日までに答弁書を作成・返送する
「口頭弁論期日呼び出し状及び答弁書催告状」が届いても慌てる必要はありません。
同封されているものは以下の通りです。
訴状に同封されているもの | |
口頭弁論期日呼び出し状及び答弁書催告状 | 第1回目の裁判の期日が書かれた書面答弁書の提出期限についても書かれている |
答弁書 | 支払督促に書かれていた内容に対して反対やその理由を記す書類 |
異議申し立て後の裁判では、支払督促について書かれた内容について話し合います。
「口頭弁論期日呼び出し状及び答弁書催告状」が届いたら、答弁書に必要事項を書いて返送する必要があります。
自力での対応も不可能ではありませんが、裁判になると平日に出廷しないといけなくなるため、訴状が届いたら、すぐ弁護士に相談することをおすすめします。
答弁書の提出期限は第一回口頭弁論の日の1~2週間前に設定されているケースが多いようです。期日に間に合うように提出してください。
3.第一回口頭弁論:論点の絞り込み
第一回口頭弁論では、訴訟内容の確認や、論点を明確にします。
口頭弁論とは、裁判官が被告(訴えられた人)や原告(訴えた人)の言い分を聞く手続きです。今回の場合でいえば、被告は債務者、原告は債権者です。
多くの場合、双方の言い分を確認して終了します。1回目の口頭弁論が終わると、2回目の期日が設定されます。民事裁判の場合、裁判がひらかれるのはだいたい月1回です。
4.続行期日:内容の議論
裁判の場面でいう「期日」とは手続きが行われる日時を指します。続行期日には主に以下の2種類あります。
手続き | 内容 |
口頭弁論期日 | 法廷で開かれる話し合い |
弁論準備手続き期日 | 傍聴席がない準備室で行われる話し合い 非公開の裁判のようなもの |
弁論準備手続きは、会議室で裁判官と弁護士、当事者が話し合うことになります。法廷よりもフランクに話しやすく、柔軟なやり取りができるため、和解が進めやすいような議論の場合に採用されやすいようです。
口頭弁論期日にしろ、弁論準備手続き期日にしろ、第1回よりも深い議論をすることになります。
5.証拠調期日:証人尋問
証人尋問は、当事者や関係者が法廷で証言して、その内容を証拠とする手続きです。
ただし、支払督促の異議申し立て後の話し合いでは、必ず行われるわけではありません。話し合うのは支払いに関してであり、借金について争うことがなければ、証人が呼ばれることもありません。
6.判決・和解
すべての手続きが終わると、判決もしくは和解となります。判決と和解の違いは以下の通りです。
判決 | 原告が請求した内容に理由があるかないかを裁判所が判断するもの双方の言い分を聞いて裁判官が下す判断内容に納得できなければ、2週間以内の不服申し立て(異議申し立て)が可能だが長期化しやすい |
和解 | お互いの主張をふまえてトラブルを最終的に解決するための合意双方が譲歩して合意できそうなら、「和解」という形で納めることを裁判官が勧めてくる和解はそれ以上異議申し立てをしないため、短期で決着がつきやすい |
判決は、裁判官が下す判断です。そのため双方にとって不利な内容になる可能性もあります。
一方和解なら、柔軟な解決が可能です。お互い譲歩すれば柔軟な取り決めができます。事前にこちらの希望を債権者に伝えておくと、スムーズに和解できる場合があるようです。
6.後日送られた和解調書に従い支払う
和解をすれば、後日和解調書が送られてきます。この和解調書は法的効力があるため、これにしたがい返済をしないと、差し押さえを受けてしまいます。
支払督促が届いたら無視せず異議申し立てを!
支払督促が届いて無視をするのは、絶対に避けるべきです。無視を続けると、給与を差し押さえられる可能性があります。
ここでは、支払督促を無視するリスクや、対処法を解説します。
支払督促を無視すると差し押さえを受ける
仮執行宣言付支払督促とは、「判決が確定する前に強制執行できる宣言」である仮執行宣言がついた支払督促のことです。
仮執行宣言があれば、判決を待たずとも差し押さえを申請できてしまいます。そのため、1回目の支払督促で異議申し立てをしなければなりません。
差し押さえを受けると、預貯金や給料などが差し押さえられることになります。
特に、給料の差し押さえは、会社が債権者に必要な金額を支払う形となります。そのため差し押さえが会社に知られることは避けられません。
1回目でしっかりと異議申し立てをしないと、思わぬリスクもあるのです。
最後の返済から5年以上経過しているなら時効支援をする
借金の時効は、最後の返済日から5年です。そのため5年以上経過していれば、借金の返済義務がなくなる可能性があります。
時効を成立させるために、時効援用(じこうえんよう)という手続きをしましょう。
援用とは債権者に時効なので支払わないと宣言することです。
支払督促の場合は、異議申立書に、時効を援用する旨を記載して、裁判所に提出すれば問題ありません。
理由欄に「消滅時効を援用する」と記載しましょう。「分割払い」という欄をチェックすると時効援用ができなくなるため注意が必要です。
また、書類に不備があれば時効の援用ができなくなってしまう可能性があります。そのため、時効の援用もサポートしてくれる弁護士に相談することをお勧めします。
支払督促の異議申立てや裁判は弁護士に相談すべき
仮に時効が過ぎていても、時効が成立しない可能性があります。また、異議申し立てをしたら今度は裁判になります。
裁判といっても話し合いのようなニュアンスですが、自分で債権者と話し合うのはハードルが高いものです。
そのため、債権者との話し合いが得意な弁護士に相談することをお勧めします。
弁護士であれば、債権者も納得できる範囲で、こちらにも無理のない返済計画を提案できます。
支払督促の異議申立や裁判の和解についてよくある質問
最後に、支払督促の異議申立てや裁判の和解について、よくある質問に回答します。
出廷する日の都合が悪い、どうしたらいい?
支払い方法について話し合い、合意できたら、その内容を答弁書に記載して裁判所と原告(債権者)に提出します。
ただし、いきなり債権者に連絡するのは危険です。余計なトラブルに発展してしまう可能性があるためです。
他にも代理人として弁護士に出廷してもらう方法もあります。
支払督促を受け取ったあとに弁護士に依頼している場合は、まずは弁護士に相談するのが確実です。
裁判になっても分割払いにしてもらえる?
分割払いが認められるケースも多いです。ただし、「頭金がないと分割払いを認めない」という債権者もいるようです。
分割払いを認めてくれるかどうかは、債権者によります。弁護士に依頼することで、貸金業者の傾向に合わせた交渉を行ってくれます。
滞納していた期間の遅延損害金も払わないとダメ?
遅延損害金(ちえんそんがいきん)とは、滞納に対するペナルティのことです。
滞納初日から、返済が遅れた分に対して加算されていきます。滞納している日数が長くなるほど金額が増えていきます。
実態としては、裁判が開始するまでのあいだに発生した遅延損害金は全額請求されるケースが多いようです。
たとえば、50万円の借り入れを、支払い期日から4年間(1460日間)返済しなかったとすると、このときの遅延損害金の利率が年20%の場合、遅延損害金は40万円になります。
裁判や支払督促を無視するとどうなる?
支払督促を無視していると、2週間後には「仮執行宣言付支払督促」が送られてきます。
それも無視していると、給料などの財産を差し押さえられてしまいます。無視するリスクについて、詳しくは「支払督促を無視すると差し押さえを受ける」で解説しています。
全く支払えない場合はどうしたらいいの?
もちろん財産がなければ、差し押さえしようがありません。しかしいつ差し押さえを受けるかはわからないため、収入があった段階で差し押さえを受けることもあります。
もし、まったく払えない場合は、自己破産をして、借金の返済義務をなくすことも検討すべきです。費用の不安も含めて、まずは、弁護士に相談することをお勧めします。
支払督促を悪用した詐欺もあるので注意する
支払督促を悪用した詐欺も存在します。この詐欺の特徴は、本物の支払督促を悪用している点です。
身に覚えがない場合は、異議申立書の言い分を書く欄に、「身に覚えがない」と記入して2週間以内に返送するとよいでしょう。
そのうえで、不安であれば、弁護士や最寄りの消費生活センターに相談することをお勧めします。
出典元:
督促手続・少額訴訟手続を悪用した架空請求にご注意ください‐法務省
まとめ
支払督促に異議申立てをすると通常訴訟に移行し、そこでは主に支払い方法について決めることになります。返済ができなくなると差し押さえを受ける恐れがあるため、支払督促が届いたら無視せず異議申し立てをすることが重要です。
支払督促の異議申立や裁判については弁護士に相談することをお勧めします。また、支払督促を悪用した詐欺も存在するため注意が必要です。
異議申し立てをしても借金の返済義務がなくなるわけではありません。債権者との話し合いになりますが、お金を貸すプロとの話し合いは自力では難しいものです。こちらに不利な条件を提示されたとしても気づけない可能性が高いためです。
そのため、支払督促が届いたら、すぐ弁護士に相談することをお勧めします。異議申立書の書き方を教えてくれるだけでなく、今後の対応についてもアドバイスをくれます。
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