自己破産前の名義変更は危険!車や家を残すための対処法
投稿日: 2025.05.25 | 更新日: 2025.05.25

「家や自動車を残したいから自己破産前に名義変更してもいい?」
「自己破産しても家や自動車を残す方法はある?」
自己破産すると、家や自動車などの高価な財産は没収されてしまいます。
しかし、自己破産前や手続き中に名義変更をするのはおすすめできません。
この記事では、自己破産前の名義変更はやめるべき理由を解説します。
自己破産前の名義変更が許されるケースや、名義変更しなくても残せる可能性のある財産についても紹介するため、参考にしてください。
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自己破産前の車や家の名義変更はやめるべき4つの理由

自己破産すると、家や車などの高価な財産があると没収されてしまいます。
そのため、事前に名義変更して財産を残そうと考える人もいますが、次の理由からやめるべきだといえます。
- 自己破産が認められない恐れがある
- 詐欺破産罪に問われる恐れがある
- 場合によっては没収対象になる
- 財産隠しとみなされると取り消しになる
1つずつチェックしてみてください。
1.自己破産が認められない恐れがある
自己破産前に名義変更すると、自己破産が認められない可能性があります。
自己破産における、免責不許可事由(めんせきふきょかじゆう)に該当することがその理由です。
免責不許可事由とは、自己破産で禁止される不正行為を指します。
財産を残そうとして名義変更し、自己破産が認められなくなってしまえば、借金はそのまま残って生活はもっと苦しくなります。
お金に換えられる財産がある場合は、きちんと申告して自己破産を認めてもらうのが賢明でしょう。
2.詐欺破産罪に問われる恐れがある
名義変更は自己破産が認められないどころか、詐欺破産罪に問われる恐れもあります。
詐欺破産罪には、財産を隠したり壊して価値を下げたりする行為や、債権者に不利益になるように財産を譲渡する行為などが該当します。
さらに本人だけでなく、名義変更を知っていて協力した人や、強要した人も対象です。
例えば、子どもが親に名義変更を頼んだ場合、自分と親の両方が詐欺破産罪に問われる可能性があるのです。
詐欺破産罪に問われると、10年以下の懲役もしくは1000万円以下の罰金、またはその両方が課せられるため注意してください。
3.場合によっては没収対象になる
自己破産の手続き前に亡くなった親名義の家を相続した場合は、自己破産の没収対象になります。
自己破産では、手続き後に得た財産は没収されませんが、手続き開始前に得た財産は没収対象になるためです。
ただし、どの範囲まで没収対象になるかは複雑なため、弁護士に相談してみてください。
4.財産隠しとみなされると取り消しになる
自己破産前の名義変更が財産隠しだとみなされると、名義変更は取り消しになります。
財産隠しは、債権者に不利益を与える行為として免責不許可事由にあたるためです。
そうなれば名義変更にかけた手間や時間も意味がなくなり、変更を頼んだ相手にも迷惑をかけるため、自己破産前の名義変更はやめたほうがいいでしょう。
自己破産前の名義変更が許されるケース

自己破産前の名義変更であっても、条件によっては許されるケースもあります。
- 家族名義の財産の名義変更は問題ない
- 自己破産後なら名義変更はできる
それぞれ確認してみてください。
家族名義の財産の名義変更は問題ない
自己破産しても、家や車が家族名義であれば、名義変更しても問題ありません。
自己破産で没収対象になるのは、自己破産をする人名義の財産のみです。
家族名義の財産であれば、そもそも没収対象にならないため安心してください。
自己破産後なら名義変更はできる
名義変更は、自己破産後であればいつでも可能です。
そのため、自己破産で没収されなかった財産があった場合、自己破産後に名義変更しても問題はありません。
自己破産前にやってしまいがちな名義変更の種類

自己破産前にやってしまいがちな名義変更の種類は次のとおりです。
- 自動車
- 家
- 生命保険
- 携帯電話
順番に解説します。
自動車
自動車は、没収されたくないからと自己破産前に名義変更してしまいがちな財産の1つです。
自動車はローン返済中だったり、20万円以上の価値があるとみなされたりすると、裁判所に没収されます。
例外的に、長期間使っていて価値がないと判断されれば、残せる場合もあります。
また、車の価値が20万円以下の場合は、親戚などの第三者に一括でローンを支払ってもらう「第三者弁済」で没収をまぬがれる可能性があるでしょう。
焦って名義変更するのではなく、このような方法で車を残せないか、まずは弁護士に相談してみてください。
家
持ち家の場合、20万円以上の価値があるため自己破産で没収対象になります。
家を夫婦の共同名義にしている場合も、自己破産する人が所有している部分は没収対象です。
すると、家の権利の半分が債権者に渡るため、結局もう一人(夫婦のいずれか)も家を手放さざるを得なくなるでしょう。
なお、自己破産前の離婚で財産分与した場合でも、弁護士や裁判所に申告が必要です。
申告しないと、財産を隠すための離婚だと疑われる恐れがあるため注意してください。
生命保険
自己破産では、生命保険の解約返戻金(かいやくへんれいきん)も、20万円を超える部分が没収対象になります。
解約返戻金とは、積み立て式の生命保険を解約した際に戻ってくるお金のことです。
そのため、生命保険の契約名義を家族に変更しようと考える人もいますが、リスクは大きいといえます。
なお、生命保険の契約者と支払っている人や受取人が別だった場合、どちらの財産と判断されるかはケースバイケースのため、弁護士に直接確認してみるといいでしょう。
携帯電話
自己破産しても携帯電話は没収されませんが、機種代金を分割支払い中の場合は強制解約されます。
ただし支払い義務はなくなるため、Wi-Fiを使えば利用は可能です。
また、自己破産後はローンは組めないものの、一括払いでの新規契約は問題なくできます。
難しい場合は、家族名義で契約してもらうことも検討してみてください。
名義変更しなくても自己破産で残せる可能性がある財産

わざわざ名義変更しなくても、自己破産では次の財産を残せる可能性があります。
- 生活に最低限必要なもの
- 価値が20万円以下のもの
- 新車登録から10年以上経過した自動車
- 資産価値のない自宅
- 自由財産が拡張されたもの
- 自己破産の手続き後に得た財産
ただしあくまで原則であり、各裁判所によっても運用が異なるため、弁護士に確認するか裁判所で確認するのが確実です。
生活に最低限必要なもの
自己破産しても、次のように生活に最低限必要なものは手元に残せます。
- 生活に必要な寝具・家具・衣類・台所用品
- 1ヶ月の生活に必要な食糧・燃料
- 仕事で使う道具
- 実印・仏像・位牌・勲章
- 年金・生活保護費 など
これらの財産は「差し押さえ禁止財産」といい、破産法で没収が禁じられています。
また、手元に残せる財産の総称を「自由財産」といいます。
- 生活に必要なもの
- 差し押さえ禁止財産
- 自己破産の手続き後に得た財産
- 99万円以下の現金
- 裁判所が自由財産の拡張を認めた財産
- 破産財団から放棄された財産
例えば、手持ちの現金は99万円までは残せますが、99万円を超える部分は没収対象です。
価値が20万円以下のもの
価値が20万円以下のものも、手元に残せます。
持ち家や新しい自動車は20万円以上の価値があるため、多くの場合は没収対象になります。
また、手持ちの現金と預貯金は違う財産として判断されあるため、預貯金の20万円を超えた部分も没収対象です。
なお、手持ちの現金なら99万円まで残せるからと、自己破産前に預貯金を引き出してタンス貯金をすると自己破産が認められないリスクがあるため、注意してください。
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新車登録から10年以上経過した自動車
新車登録から10年以上経過し、価値が20万円以下と判断された自動車も没収の対象外です。
ただし、高級車の場合はある程度の期間が経っても価値が高いケースがあるため、査定に出して確認するといいでしょう。
また、裁判所によって運用が異なる場合もあることから、不安な場合は弁護士に相談してみてください。
資産価値のない自宅
資産価値のないような自宅や不動産も、手元に残せる可能性があります。
例えば、土地を所有しているものの山林で価値がなかったり、買い手がつかないような土地だったりすると、自己破産の手続きでも放棄されるケースがあります。
また、資産価値がなくなった自宅なら、自由財産の拡張で手元に残せることがあるため、弁護士に相談してみてください。
自由財産が拡張されたもの
自己破産で手元に残せる自由財産は、裁判所に申立てると範囲を拡張してもらえるケースがあります。
例えば、地方在住でどうしても車が手放せない事情がある場合、裁判所が自由財産だと判断して没収されずに済む可能性があるのです。
どうしても手元に残したい財産があるときは、弁護士に相談してみるといいでしょう。
自己破産の手続き後に得た財産
自己破産の手続き後に得た財産も、没収対象にはなりません。
例えば、会社でもらった給与や賞与などが該当します。
自己破産で没収の対象となるのは、あくまで自己破産の手続きが開始されるまでの財産だということを覚えておいてください。
自己破産以外で車や家を残す方法

自己破産で車や家を残すには、自由財産の拡張を裁判所に訴える方法があります。
そのほかにも、自己破産以外にできる手続きは次のとおりです。
- 個人再生で持ち家を残す
- 任意整理で家や自動車のローンを対象から外す
- リースバックを活用する
1つずつチェックしてみてください。
個人再生で持ち家を残す
持ち家を残したい場合は、個人再生がおすすめです。
個人再生は、裁判所に申立てて借金を5分の1〜最大10分の1に減額する手続きです。
ローンを支払い中の持ち家がある場合は、「住宅ローン特則」を利用すると、持ち家を残したまま手続きができます。
ただし利用には条件があるため、きちんと確認した上で検討してください。
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任意整理で家や自動車のローンを対象から外す
特定のローンを対象から外して債務整理したい場合は、任意整理がおすすめです。
任意整理は、債権者と直接話し合って、将来利息のカットや返済期間の延長を求める手続きです。
任意整理では整理する借金を選べることから、家や自動車を整理の対象外にすれば影響はなく、没収もされません。
ただし、借金を大きく減額できない可能性もあるため、自分のケースに向いているかどうか弁護士に相談してみてください。
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リースバックを活用する
リースバックを活用すると、自宅に住み続けることも可能です。
リースバックとは、自宅を売却後に購入者である不動産会社などと借家契約を結び、賃貸物件として自宅を借りる方法です。
家の所有権は失ってしまうものの、自宅に住み続けたいという人には向いているでしょう。
ただし、売却したお金は借金の返済にあてられるほか、売却額は市場価格の7〜8割程度と低めになります。
また、自己破産の手続き後では申請が難しく、手続き前でも財産隠しとみなされないよう注意が必要です。
不安な場合は、弁護士に相談するのが確実でしょう。
自己破産前に名義変更してしまったらどうする?

もし、自己破産前に名義変更してしまった場合は、次のように対処してください。
- 隠さず正直に申告する
- 名義変更して影響がある期間とは
それぞれ解説します。
隠さず正直に申告する
もし、自己破産前に名義変更をしてしまった場合は、弁護士や裁判所に正直に申告するのが一番です。
仮に免責不許可事由に該当したとしても、債権者に不利益をもたらそうとする意図がなかったことや、今後更生する意思があることを示せれば、裁判所の判断で自己破産が認められる可能性があります。
隠すとかえって逆効果になるため、もし名義変更してしまっても、反省して正直に申告してください。
名義変更して影響がある期間とは
自己破産では、基本的に手続き開始の2年前までに処分した財産を確認されます。
ただし、2年以上前だからセーフとも言いきれず、「名義変更が債権者に不利益を与える目的で行われているか」が重視されます。
とはいえ、何年も前に名義変更していれば、その時点から自己破産を見すえていたり、没収される財産を減らそうとしていたりしたとは考えにくいでしょう。
そのため、過去に名義変更した事実があっても、正直に申告すればわかってもらえるはずです。
自己破産の名義変更はNG!財産を残したいなら弁護士に相談しよう

自己破産前の名義変更は、自己破産が認められなかったり、詐欺破産罪に問われたりする恐れがあるためやめるべきです。
ただし、家や自動車が家族名義である、自己破産手続き後に得た財産であるなどの場合は問題ありません。
自己破産しても、生活に最低限必要なものや99万円以下の現金、価値が20万円以下の車などは手元に残せる可能性があります。
家や自動車を残したい場合は、個人再生や任意整理も検討するといいでしょう。
もし自己破産前に名義変更をしてしまった場合でも、素直に申告することが大切です。
自己破産の名義変更に悩んでいたり、財産を手元に残したいと考えていたりする人は、まずは弁護士に相談してみてください。
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