自己破産でネット銀行の口座・財産隠しはバレる!リスクと対処法を解説
投稿日: 2025.05.19 | 更新日: 2025.05.19

「自己破産するときはネット銀行も申告が必要なの?」
「自己破産でネット銀行を隠してもバレるって本当?」
近年はネット銀行を利用する人も増えていますが、自己破産する際は保有するすべての銀行口座の通帳の提出が求められます。
「ネット銀行だからバレないだろう」と考えて隠したりすると、大きなリスクをともなうため注意が必要です。
この記事では、自己破産でネット銀行の口座・財産隠しがバレる理由や、バレるとどうなるかを解説します。
取引履歴を取り寄せる方法や、自己破産前にやっておくことも紹介するため、自己破産とネット銀行の関係について知りたい人は参考にしてください。
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自己破産でネット銀行の口座・財産隠しがバレる理由

自己破産する際、ネット銀行の口座や財産隠しをしようとしても、次の理由でバレることがほとんどです。
- 裁判所や破産管財人が詳しく調査するため
- 家計簿や使っていない銀行の通帳も提出するため
- お金の流れに不自然な点があるため
1つずつ詳しく解説します。
裁判所や破産管財人が詳しく調査するため
自己破産する際は、裁判所や破産管財人(はさんかんざいにん)が財産を詳しく調査します。
破産管財人とは、財産がある場合の管財事件において、財産や家計調査をする人のことです。
財産調査は、本当に返済できない状況なのかや、債権者に分配できそうな財産がないか確認する目的で行われます。
書類の内容についても事情聴取が行われるため、不自然な点があれば財産隠しを疑われる原因になるでしょう。
家計簿や使っていない銀行の通帳も提出するため
自己破産する際は、家計簿や使ってない口座の通帳も提出義務があります。
家計簿上の計算と実際のお金が合わなかったり、収入に対する支出の割合が多かったりすると、タンス貯金やネット口座の存在を疑われる可能性があるでしょう。
なお、家計簿は自己破産の申立て時に2ヶ月分を提出する必要があり、弁護士に依頼した段階から作成しなければなりません。
弁護士と裁判所の二重のチェックが入るため、嘘の内容で乗り切ることは難しいでしょう。
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お金の流れに不自然な点があるため
財産調査においてお金の流れに不自然な点があることも、ネット銀行の口座や財産隠しがバレる原因の1つです。
銀行から移されたお金の履歴はすべて調査されるため、仮にネット銀行の口座自体は隠せても、移動前の口座の履歴からすぐにバレてしまうでしょう。
また、申立て前に多額の現金が引き出されているのに手元になかったり、収入はあるのに入出金の履歴がなかったりすると、隠し口座が疑われるのも無理はありません。
自己破産ですべての口座の通帳提出が必要な理由

自己破産する際はネット銀行の口座はもちろん、使っていない・残高がない口座も含め、すべての通帳で直近1〜2年分の明細提出が必要です。
その理由は次のとおりです。
- 支払い不能状態かチェックするため
- 保有しているお金と流れをチェックするため
- 通帳の提出を忘れたらどうする?
1つずつ詳しく解説します。
支払い不能状態かチェックするため
自己破産するには、本当に支払い不能状態か確認しなければなりません。
これは自己破産の条件の1つであり、収入や財産の状況を細かくチェックする必要があります。
もし、借金が返済できないといいながら口座に何百万もあれば、当然それで返済できるとみなされてしまいます。
その点、通帳を見ればお金の流れや残金が明確にわかるため、裁判所に自己破産を認めてもらう客観的な証拠になるのです。
保有しているお金と流れをチェックするため
通帳提出が必要なもう1つの理由は、保有しているお金とその流れをチェックするためです。
例えば、次のような通帳の明細があったとします。
年月日 | お預り金 | お支払い金 | 残高 |
2025/4/20 | 500,000円 | 578,000円 | |
2025/4/20 | 300,000円 | 278,000円 | |
2025/4/25 | 40,000円(家賃) | 238,000円 | |
2025/5/4 | 30,000円 | 208,000円 | |
2025/5/13 | 20,000円(返済) | 188,000円 | |
2025/5/16 | 170,000円 | 18,000円 |
上記は極端な例ですが、次の点が不自然だと考えられるのです。
- 500,000円の入金はなにか
- 300,000円の引き出しはなにか
- 1ヶ月間に一度も給与の預け入れがないのはなぜか
通帳を見ても収入源や支出の用途がわからない場合は、直接説明が求められます。
すると、じつはギャンブルにお金を使っていた、申告した口座とは別に給与の振り込み口座があったといった事実がわかるかもしれません。
通帳の明細の違和感から重要なことがわかる可能性があるため、すべての通帳を確認するように定められているのです。
通帳の提出を忘れたらどうする?
通帳の提出を忘れても、使っていない口座で存在を忘れていたなど、故意でない限りは気付いた時点で提出すれば問題ありません。
ただし、何度も同じようなミスが続いたり、最近まで利用履歴があり明らかに故意で隠したと判断されたりすると、財産隠しとみなされるリスクがあるため注意が必要です。
また、手続きがある程度進んでから新たに通帳が見つかった場合、財産調査が最初からやり直しになり手続きが長引いてしまいます。
スムーズな手続きのためにも、申立て前に保有するすべての通帳を揃えるようにしてください。
ネット銀行の口座・履歴隠しがバレた場合のリスク

ネット銀行の口座や履歴隠しがバレると、次のようなリスクがあります。
- 自己破産が認められない可能性がある
- 詐欺破産罪になる可能性がある
順番に解説します。
自己破産が認められない可能性がある
ネット銀行の口座や履歴を故意に隠す行為は財産隠しとみなされ、自己破産が認められない可能性があります。
財産隠しや、裁判所に虚偽の申告をするなどの不正行為は、「この条件にあてはまった場合は借金を免責しません」という免責不許可事由(めんせきふきょかじゆう)にあたるためです。(出典:破産法252条)
自己破産が認められないと借金がそのまま残るだけでなく、自己破産にかかった数十万円の費用も無駄になってしまいます。
なるべく財産を残して自己破産しようなどというずるい考えはやめ、正しい手続きを踏むようにしてください。
詐欺破産罪になる可能性がある
ネット銀行の口座や履歴を故意に隠すと、最悪の場合、詐欺破産罪(さぎはさんざい)で逮捕される恐れもあります。
破産詐欺罪とは、債権者に損をさせる目的で財産を隠したり壊したりする行為をいい、10年以下の懲役もしくは1000万円以下の罰金、またはその両方が課せられます。
2017年には、破産手続き中に破産管財人に申告していなかった現金約1,000万円が見つかり、旅行会社の社長が逮捕された事例もあるため、きちんと申告することが大切です。
参考:日本経済新聞「てるみ社長 4回目逮捕 財産1000万円隠した疑い」
ネット銀行の通帳・取引履歴の取り寄せ方

ここでは、自己破産する際の通帳・取引履歴の取り寄せ方や、通帳を紛失した場合の手続き方法について解説します。
- ネット銀行の取引履歴を取得する方法
- 通帳を紛失した場合の手続き方法
それぞれ参考にしてください。
ネット銀行の取引履歴を取得する方法
主なネット銀行で、取引履歴を取り寄せる方法は次のとおりです。
銀行 | 取引履歴の取得方法 |
楽天銀行 | ログイン→入出金明細照会→ダウンロード |
ソニー銀行 | PCサイトへログイン→通帳→ダウンロード |
イオン銀行 | ログイン→入出金明細照会→ダウンロード |
GMOあおぞらネット銀行 | ログイン→入出金明細照会→ダウンロード |
住信SBIネット銀行 | ログイン→入出金明細照会→ダウンロード |
多くのネット銀行では、ログイン後に入出金明細へアクセスしたあと、PDFやCSVなどの形式でダウンロードに対応しています。
ただし、最大で1年分しか対応していない銀行の場合は、有料で書類を発行してもらう必要があります。
通帳を紛失した場合の手続き方法
ネット銀行以外で通帳を紛失した場合は、銀行の窓口で取引履歴を取得しなければなりません。
ただし、自己破産の手続きには半年以上かかり、その間に何度も記帳が必要になるため、再発行したほうが手間は少なく済むでしょう。
自己破産前にやっておくこと

自己破産する前には、次のことをやっておくと手続きがスムーズに進みます。
- すべての通帳を揃える
- 引き落とし口座を変更する
- 申立て前2週間以内に記帳する
- 取引明細書を発行する
1つずつ確認してみてください。
すべての通帳を揃える
自己破産前には、保有するすべての通帳を揃えておくといいでしょう。
その際は、直近1〜2年分の取引履歴が確認できなければなりません。
くわえて、通帳が見当たらない場合や、ネット銀行でそもそも通帳がない場合は、1〜2年分の取引履歴を印刷して用意する必要があります。
引き落とし口座を変更する
自己破産前には、引き落とし口座を変更しておくとスムーズです。
銀行に借金があると、自己破産の申立てによって口座が凍結される可能性が高いためです。
公共料金や家賃の支払いを口座振替やクレジットカード払いに設定している場合は、コンビニ払いなどに変更しておいてください。
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申立て前2週間以内に記帳する
まだ記帳していない通帳がある場合は、申立て前の2週間以内に記帳するのがおすすめです。
通帳は最新の状態にしておく必要がある上、長期間記帳がないと、未記帳分もまとめて記載されてしまいます。
そうなると、未記帳の期間分は銀行ごとに取引明細書を取り寄せなければならないため、弁護士に依頼した時点からこまめに記帳しておくといいでしょう。
取引明細書を発行する
通帳を紛失したり、ネット銀行のマイページで直近1年分しか取引履歴が確認できなかったりするときは、取引明細書の発行が必要です。
ただし発行は有料の場合があり、例えば楽天銀行の場合は次のような決まりになっています。
発行期間 | 手数料(税込) |
6ヶ月以内 | 524円/通 |
6ヶ月超 | 524円+(110円×6ヶ月超の月数) |
自分が利用している銀行のサービスがどうなっているか、一度調べてみるといいでしょう。
自己破産とネット銀行や口座に関するQ&A

ここからは、自己破産とネット銀行や口座に関するQ&Aを紹介します。
- 自己破産前に口座からお金を引き落としても問題ない?
- 使っていないネット銀行は解約しておくべき?
- 自己破産をすると銀行口座は作れない?
- 仮想通貨・暗号資産も財産になる?
- 財産を残したい場合はどうする?
- PayPay送金してもバレる?
疑問点や不安があれば、ここで解消しておいてください。
自己破産前に口座からお金を引き落としても問題ない?
自己破産前にまとまったお金を引き出すと、財産隠しを疑われる恐れがあるためやめたほうが無難です。
自己破産で残せるお金は預貯金では20万円以下のところ、現金では99万円以下のため、なるべく多く手元に置いておきたいと考える人もいます。
しかし、すべての通帳を見ればお金の流れはわかるため、結局預金として処理される可能性が高いでしょう。
ただし、自己破産する費用として、借り入れのない銀行(凍結されない口座)に移しておく行為は認められます。
そのかわり、両方の口座の通帳や取引履歴を残し、きちんと説明できるようにしておく必要があります。
心配な場合は、お金を移す前に弁護士に相談してください。
使っていないネット銀行は解約しておくべき?
基本的には、現在使っていないネット銀行でもそのままにしておくのがおすすめです。
自己破産前に解約すると、かえって財産隠しが疑われる恐れがあります。
また、解約して取引履歴が見られなくなった場合、わずかでも過去に取引があれば、お金の流れに不自然な点があったときの証明が難しくなってしまいます。
すでに解約してしまった場合でも、銀行によっては解約後数年間は取引履歴が見られるところもあるため、確認してみてください。
自己破産をすると銀行口座は作れない?
銀行口座に信用情報についての審査はないため、自己破産しても口座は作れます。
ただし、破産後5〜7年は銀行のローンは組めません。
また、同じ銀行に新規口座を作る場合、タイミングによっては入金したお金が返済にあてられる可能性があるため注意してください。
仮想通貨・暗号資産も財産になる?
原則として、ビットコインなどの仮想通貨や暗号資産も財産と判断される可能性があります。
ただし、現行の法律では自己破産における仮想通貨や暗号資産についての扱いに決まりがないのが現状です。
今後法整備が進められれば、一定の規定ができ差し押さえ対象となることは十分考えられるでしょう。
財産を残したい場合はどうする?
どうしても財産を残して借金を整理したい場合は、任意整理や個人再生を検討してください。
債務整理の方法 | 内容 |
任意整理 | ・債権者との直接交渉で利息をカットしてもらう手続き ・減額したい借金を自分で選べる |
個人再生 | ・裁判所に返済スケジュール案を提出し、認められれば元金が5分の1〜10分の1に減額される手続き ・任意整理よりも大幅な減額が期待できる |
ただし、どの方法が合っているかは借金額や債権者数、財産の有無などで異なるため、まずは弁護士に相談するのがおすすめです。
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PayPay送金してもバレる?
PayPayで送金して口座を隠そうとしても、チャージ元の銀行口座からバレる可能性が高いでしょう。
PayPay残高は、現金と同じ価値があるとして財産扱いになります。
PayPayの利用履歴やチャージ残高もきちんと申告しないと、財産隠しが疑われる原因になるため注意してください。
自己破産でのネット銀行の悩みは弁護士に相談しよう

自己破産ではすべての預金通帳の提出が求められ、ネット銀行の口座を隠そうとしてもバレる可能性が高いといえます。
ネット銀行には通帳がないため、マイページから取引履歴を印刷して用意しなければなりません。
通常の銀行の通帳についても、紛失した場合は取引明細書の発行が必要です。
口座隠しは免責不許可事由になったり、詐欺破産罪になったりする恐れもあるため、絶対にやめてください。
バレれば自己破産が認められないどころか、支払った費用も無駄になってしまいます。
素直にありのままを申告し、財産隠しを疑われることのないよう、お金の流れをきちんと説明できるようにしておくといいでしょう。
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